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「今までは(林下)詩美さんに頼ってしまっていた。でも…」大ケガからの復帰、盟友の新団体移籍…“スターダム残留”を選んだ上谷沙弥のホンネ
posted2024/05/22 11:11
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
「赤いベルトをあきらめたわけじゃない」
赤いリングコスチュームでハイスピード王座のベルトを手にした上谷沙弥は、自分に言い聞かせるようにそう語った。ワールド・オブ・スターダム王座を狙っているという意思表示だった。
「赤いコスチュームはいろいろな意味を込めて作ったけれど、強さと言えば赤。赤は強さの象徴、クイーンズ・クエスト(QQ)のリーダーだった(林下)詩美さんの色。詩美さんの想いも背負っていきます」
1年前の大ケガ…支えてくれたのは林下詩美だった
QQのリーダーは不在だが、上谷はリーダーを引き継ぐ構えだ。
「今まではどこか詩美さんに頼ってしまっていた。でも、今は自分でどうにかしようと思うようになりました。責任感が出てきたと思います。まだ、リーダーは決まっていないですが、みんなにダメって言われなければ(笑)。ハイスピードのベルトを私色に染めて、そしてクイーンズ・クエストを、私がしっかり引っ張っていく」
つい最近まで上谷のイメージカラーは緑だった。それを思い切って赤に変えた。
「デビューしてからは、グリーン、水色と白がベースだったので、赤を披露した横浜BUNTAIのお客さんの反応も大きかった」
2023年7月、上谷は大田区総合体育館の照明の柱をよじ登り5メートル上空から中野たむにプランチャ・スイシーダ(フライング・ボディアタック)を放ったが失敗。試合続行不可能となり、左ヒジ脱臼、じん帯損傷という大アクシデントに遭遇してしまった。上谷は泣きじゃくり混乱していた。この時、付き添って支えてくれたのが林下だった。
林下は4月12日の試合を最後にスターダムから新団体マリーゴールドに移ったが、上谷にとって林下と組んだアフロディーテというタッグチームは特別なものだった。
アフロディーテとして二人の“さよならイベント”も行い、林下の最終戦でタッグも組んで、さらには5分間だけシングルでも対戦することができた。
「詩美さんをしっかりした形で送り出せてよかった」