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JリーグPRESSBACK NUMBER
欧州デビュー目前に…3度の前十字靭帯断裂で消えた“天才”は全国注目の指導者になっていた! 財前宣之47歳の今「俺にしかできないことがある」
text by
生島洋介Yosuke Ikushima
photograph byYuki Suenaga
posted2024/05/17 11:01
現在は自身で立ち上げた小学生対象のサッカースクールと、ジュニアユース「FCフォーリクラッセ仙台」の代表を務める財前さん
怪我との闘いが「強み」に
天才の名をほしいままにし、いち早く欧州クラブにも接近しながら度重なる怪我に泣かされた財前。しかし、35歳までプレーを続けた現役生活は、指導者となった彼にとって大きな強みとなっている。いまも圧倒的なテクニックを見せることはもちろん、彼だから言葉で伝えられることがある。
「俺にしかできないことがあると思っています。ヨーロッパでデビューはできなかったけど、トップの選手と身近で触れ合えたことは財産です。例えば(ジュゼッペ・)シニョーリなら、3度セリエAの得点王になった選手が日頃どういう練習をしているのか。彼は2、3mのスピードで仕事をするので、抜くところは抜いていても、そのキレを出す練習メニューは徹底的にやっていました。そうやって自分の武器を磨き続けていた。
スペインではウルグアイ代表だったルベン・ソサがよく面倒をみてくれて、同じ外国人として点に絡むことの大切さなんかも教えてくれました。それにクロアチアやタイ、もちろんJ1、J2と本当に色々な景色を見て、他の人にはない経験をしたと思っています」
大事なのは「何をどう伝えるか」だと財前は熱弁する。上を目指すチームの中にも、様々な思いを抱えた選手たちがいる。
「タフにやっていますよ」
「上しか見てきてなかったら下の気持ちはわからないだろうけど、俺は怪我をした選手、試合に出られない選手の気持ちもわかる。子どもたちには両方を伝えられると思っています。俺自身は聞く耳を持ってなかった時期もあります。生意気だった高校生の頃は、サッカーは技術でしょって。体力自慢のやつらを全員股抜きしてやるよって。
なのに現実は、U-17で10番だった俺が、次のU-20には呼ばれていないんです。U-20では1つ上の学年が主力になるとはいえ、体の強いヒデ(中田英寿)やマツ(松田直樹)は入っていた。でも、いまなら体力がいかに大事かわかるし、選手にも伝えられるんです。
フォーリクラッセもタフにやっていますよ。遠くのJクラブにもバスで行くし、行ったらどんな練習試合でも公式戦の決勝のつもりでやろうと。爪痕を残していかないと次のチャンスはないですから」
(前編も公開中です)