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「誰よりも自分の体を知っている」ドジャース・大谷翔平が“フライボール革命の第一人者”打撃コーチと取り組む新フォームとは?
posted2024/04/24 11:03
text by
柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph by
Nanae Suzuki
自己ワーストの更新を止める開幕から9試合目、41打席目での一発だった。4月3日のジャイアンツ戦。大谷翔平は一塁を回る手前で右拳をグッと握り締めた。ドジャースの一員として本拠地で初めて本塁打を放ち、5万2746人の大観衆は総立ちで地鳴りのような歓声が沸き起こった。
「自分の中ではかなり長い間、打っていないなという感覚だった。まず1本出て安心しているのが率直なところ」
移動日を挟み、続く5日のカブス戦。投打含めて初のリグリー・フィールドでも快音を残し、2試合連続本塁打。本塁打を放った直後の打席でも特大の中飛を放ち、デーブ・ロバーツ監督も「明らかに良いスイング。翔平は本調子に近づいている」と太鼓判を押した。
「変わらないけど微調整」無駄のないスイング
昨年9月に右肘の手術を受けた影響で打者に専念する米7年目。キャンプ序盤から目についたのが打撃フォームの変化だった。昨季の構えは、左肘を後方に高く上げ右肩が本塁方向に傾いていた。だが、今季は背筋を伸ばし肩はほぼ水平。2月21日の2度目のライブBP(実戦形式の打撃練習)後に「変わらないけど微調整はする」と語ったように、自然な姿勢から無駄のないスイングが可能になった。2月24日には近距離で軽い専用ボールを発射するマシン相手の打撃練習で、内角球へのバットのさばき方を入念に確認。右肘の状態に関しても「感覚も良かった」と言った。
キャンプでは開幕への目安に50打席を設定し、渡韓前の実戦は雨天ノーゲームも含め25打席、ライブBPで9打席、韓国でのエキシビションゲーム2試合で5打席に立ち、計39打席。最新マシンを使った室内打撃練習場で11打席分の不足を補った。ロバート・バンスコヨック打撃コーチによれば、大谷の室内打撃練習場でのルーティンは(1)置いた球を打つ「置きティー」、(2)前方から投げてもらうティー打撃、(3)投手の映像が流れ投球を再現する打撃マシン「トラジェクトアーク」での練習の3つ。同コーチは「自分自身の(スイングの)スピードや動きを数値で管理し、思い通りに動けているか確認している」と説明した。
バンスコヨック打撃コーチは2017年頃からMLBを席巻した「フライボール革命」の第一人者。メジャー経験もマイナー経験もない異色の経歴だ。打撃コンサルタントのクレイグ・ウォーレンブロック氏とともに、当時の極端な内野シフトに対抗する手段として、本塁打狙いのアッパースイングを理想とする打撃理論でJ・D・マルティネス(現メッツ)ら多くの強打者と接してきた。同コーチは、タブレット端末などで相手の研究はもちろん、自身のデータ収集にも励む大谷を「誰よりも自分の体のことを知っている」と評している。
シーズン開幕後、バンスコヨック打撃コーチは室内で打撃練習する選手を担当することが多く、屋外フリー打撃はもう1人のアーロン・ベーツ打撃コーチがタブレット端末で撮影しながら見守ることが多い。
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