プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「巨人・阿部野球は何が変わった?」原監督時代はあり得ない阿部慎之助監督の“逃げ切りプラン”…捕手・小林誠司に代打を送らなかったワケ
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/04/22 17:06
捕手出身ならではの巨人・阿部慎之助監督の采配や決断とは…
昨年のセ・リーグの1試合平均得点は3.51まで下がり、今季は4月18日時点で同2.76まで落ちてきている。
3点を境にした勝負。これが現時点でのセ・リーグ(パ・リーグも似たような傾向で同18日時点で1試合平均得点は2.99)の野球の現実である。昨年の覇者・阪神が球団ワーストタイの10試合連続2得点以下を記録したり、はたまた投手力が高い中日が接戦を凌いで勝ちきり首位に立っていたのも(20日時点)、こうした投高打低現象を考えれば納得がいく。
そして2019年と20年に原監督の攻撃野球で連覇を果たした巨人が、徐々に力を失いこの2年間はBクラスに沈んだ原因も見えてくる。投手力を中心に守りの野球ができる岡田阪神の優勝も、やはり打力でリーグ連覇したヤクルトが、一気に凋落傾向にある原因も、全てとは言わないがこの数字で説明がつくところがあるだろう。
これがいまの日本のプロ野球である。
今年のセ・リーグでは阿部監督の決断が正解
そこで場面を4月14日の広島戦に戻してみよう。6回の満塁の場面。もし原前監督の2019年当時なら小林に代打を送り、追加点を狙って一気に決断ができないとなかなか勝負には勝てなかった。しかし今年のセ・リーグでは阿部監督の決断が正解なのだ。むしろ守り重視で、1点差をいかに守り抜いて白星に結びつけられるか。そういう野球が求められている。
だとすれば阿部監督の守りの野球は、今のプロ野球を勝ち抜くための必然であり、まさに時代にマッチしたチーム戦略が巨人の好スタートの要因とも見て取れるわけである。
この投高打低現象、原因として現場からは「ボールが飛ばない」という声をよく聞く。実際に過去に同じように1試合平均得点が極端に下がったのが、例の反発係数がルールの基準値より低い違反球を使用していた2011年から12年にかけてだった。当時は12球団の1試合平均得点が3.26まで落ちており、昨年はその当時に匹敵する。ただこの違反球問題の発覚から、NPBでは厳密な検査と検査結果の公表を行っており、反発係数そのものに大きな変化がないとされている。
捕手出身監督ならではのバッテリーのペアリング
だとすれば何が原因なのか……。すべてとは言わないが投手のレベルアップ、特に中継ぎからセットアッパー、クローザーへとつなぐリリーフ陣のレベルアップにも一因があるように思える。いまはリリーフ投手が150kmを投げるのは当たり前で、むしろそれくらい真っ直ぐに力を持っていないとなかなか一軍ベンチに入れないくらいの傾向もある。