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「巨人・阿部野球は何が変わった?」原監督時代はあり得ない阿部慎之助監督の“逃げ切りプラン”…捕手・小林誠司に代打を送らなかったワケ
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/04/22 17:06
捕手出身ならではの巨人・阿部慎之助監督の采配や決断とは…
「(代打は微塵も)考えませんでした。相手も嫌なので(笑)。(小林は)抑えて当然だと思っているので。そうだと思いますよ」
後半の話は阿部流のジョーク返しではあるが、いずれにしても追加点を奪って一気に試合を決めにいく決断ではなく、阿部監督は確信を持って1点差で逃げ切るゲームプランを選択したのだ。結局、小林は三ゴロに倒れ、このチャンスに追加点を奪うことはできなかったが、7回を高橋が0点に抑え、8回からはアルベルト・バルドナード、大勢と2投手を繋いで予定通りの1点差勝ちを収めることに成功したのである。
バッテリーを中心とした守り優先の野球は、捕手出身の監督らしいといえばその通りである。そういう野球がピタリとハマったことが、今シーズンの巨人の好スタートの要因であることは間違いない事実だ。この好スタートの背景には、いくつかの要因がある。中でも最も大きいと思えるのは、こういう守りの野球がここ数年の日本のプロ野球の流れにマッチしたものだということだ。
極端な投高打低の傾向
ここ2、3年、特に昨年くらいから日本のプロ野球は極端な投高打低の傾向にある。
「いまの野球はある程度、点が取れないと勝てない。そのためにいかにその手立てを持って、決断できるかが監督の大きな仕事になると思う」
こう語っていたのは第2次政権時代の原前監督だった。
実は原前監督が3度目の監督就任を果たした前後の日本のプロ野球は、完全な打高投低の時代だったのである。2019年のセ・リーグの1試合平均チーム得点は4.20。つまり5点取らないと勝てないということだ。
もちろん個別の投手によってゲームプランは変わってくる。しかしそれでも基本的に監督は2、3点勝負の守りの野球ではなく、ある程度の打撃戦を想定して、点を取るためのプランを考えながら試合を進めなければならなかった。それが原前監督の言葉の意味である。
1試合平均得点は減少
ところが実は2018年、19年くらいから、徐々に様相は変化してきていた。この頃を境に徐々に投高打低の兆候が出だしてきて、昨年から今年にかけてはさらにその傾向に拍車がかかってきているのである。