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逮捕者続出のブレイキングダウンが問われる「格闘技か、喧嘩か?」 一般的な生活が分からない“不良たちの実像”「大きい声を出すか手が出るか…」

posted2024/04/09 11:00

 
逮捕者続出のブレイキングダウンが問われる「格闘技か、喧嘩か?」 一般的な生活が分からない“不良たちの実像”「大きい声を出すか手が出るか…」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

ブレイキングダウン「喧嘩自慢トーナメント」の記者会見で起きた乱闘の様子

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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Norihiro Hashimoto

 悪い意味で「らしい」結末になってしまった。3月30日に開催された『BreakingDown11.5』でのことだ。前回大会まで行われていた団体戦「喧嘩自慢トーナメント」を勝ち上がった大阪チームが、優勝を返上したのだ。大阪チームの監督を務めた瓜田純士がケージの中で表明。決勝を争った大宮チームの監督に謝罪した。

 優勝返上の理由は、大阪チームのメンバーであるシェンロンとダイスケの逮捕。容疑は恐喝だった。同じ事件で逮捕されたサップ西成もブレイキングダウン出場歴がある。

 その後もチョン・ツーウェイは傷害の現行犯、サカキマキオが強盗容疑と、ブレイキングダウン参加者の逮捕が相次いだ。

 ブレイキングダウンは朝倉未来が発案、プロデュース、CEOも務める格闘技イベント。試合時間1分という独自のルール、競技性が特徴だ。人気に火がついたのは、対戦カードを決めるオーディションを実施するようになってから。

 逮捕、少年院上がりといった過去を持つ“不良”たちが罵り合い、乱闘を繰り広げ、試合で決着をつける。そんな姿が大ウケした。逮捕されたシェンロン曰く「アウトローのディズニーランド」だ。

“不良コンテンツ”への批判と抑えがたい人気

 しかし当たり前のことだが、暴れていいのはセキュリティ完備の“園内”だけだ。大阪チーム監督の瓜田は、こう言って謝罪した。

「世間にも興行にも迷惑をかけて(決勝で対戦した)大宮のヤツらが一番腹立たしかったと思う。会見であれだけ煽り倒してこの結果になり、本当に申し訳なかった」

 大阪チームは乱闘の“常習犯”だった。記者会見では進行を無視して対戦相手を罵り、襲いかかる。だから注目されたし、同時に「言わんこっちゃない」という印象も残る。

 不良など格闘技に関わらせるものではない、不良を売りにする格闘技イベントなどまともではない。そういう批判は常にあった。筆者も不良には近づきたくないし、表舞台に出るならこれまで迷惑をかけた人たち全員に土下座してからにしろと思う。

 だが、その一方で不良やアウトローを題材にした映画や漫画は今も人気がある。“こういうふうにしか生きられない”人間の哀しさに共感することもある。『仁義なき戦い』を見て「所詮は反社」とは言わないだろう。

『あしたのジョー』だって、少年院上がりの主人公が“少年院流のやり方”でボクシングに挑む物語だ。もしかするとブレイキングダウンの出場者たちは“力石徹に出会わなかった矢吹ジョー”なのかもしれない。

 いや、ブレイキングダウンというイベントそのものが“力石徹”なのか。出場選手の中には、喧嘩三昧の日々から抜け出し格闘技を志した時にブレイキングダウンを知ったという者もいた。荒んだ生活から抜け出すための舞台として、ブレイキングダウンは機能しているのだ。出場をきっかけに世に出ようとするのは不良たちだけではないし、プロの世界に進出する“本格派”もいる。

【次ページ】 運営は「無期限の出場停止」を発表

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