濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
逮捕者続出のブレイキングダウンが問われる「格闘技か、喧嘩か?」 一般的な生活が分からない“不良たちの実像”「大きい声を出すか手が出るか…」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2024/04/09 11:00
ブレイキングダウン「喧嘩自慢トーナメント」の記者会見で起きた乱闘の様子
ブレイキングダウンは格闘技か、喧嘩か?
そのためには運営のやり方、大会の見せ方を変えていく必要もあるだろう。不良たちが変わって(更生して)いく姿を見せたいのであれば「喧嘩自慢トーナメント」といった打ち出し方は本末転倒だ。“ワル武勇伝”も不要。喧嘩をしたり警察に捕まったり人に迷惑をかけたことは恥ずべき過去、乗り越えるべきダークサイドでしかない。それを今後も視聴者に“エンタメ”として提供し続けるなら、不良たちの複雑で哀しい人生で金儲けしているという批判は免れない。
知名度からくる影響力も無視できないだろう。単純に言えば、ブレイキングダウンは“バカに真似されやすい”のだ。格闘技と路上の喧嘩が同一視されてはいけない。その一方で、不良たちに「ここで俺も人生をやり直したい」と思わせる魅力をどう保っていくか。ボクシングやMMAのトッププロの世界を夢見ることはできなくても、ブレイキングダウンを見て「ここになら俺の居場所がある」と思える人間たちもいるのだ。
「ブレイキングダウンは格闘技じゃねえ、喧嘩だ」
そう断言する参加者も少なくない。それを強く否定しないまま大会が運営されてきて、結局は“逮捕者続出”という事態になった。では格闘技と喧嘩の間のどこに“越えてはいけない一線”を引くか。ネットPPVとYouTubeで成長してきたブレイキングダウンには、地上波コンテンツとは違う自由さがある。しかしそれも“野放し”でいいというわけではない。「アウトローのディズニーランド」は文化に育つか徒花で終わるか。今この時を分岐点にしなくてはいけない。