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“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「ベンチでの佇まいも雰囲気があるんです」名門・筑波大サッカー部の選ばれし“推薦組”が異例の決断…わずか1年で“選手”を辞めた、なぜ?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2024/04/05 17:02
リーグ連覇を狙う筑波大学でヘッドコーチに就任した戸田伊吹(4年)。プレーヤーとして入学したが、2022年から指導者に専念している
4月6日に開幕する関東大学サッカーリーグを前に、率直な質問をぶつけた。かつての仲間たちを「使う側」にまわることに葛藤はないのか。時には「使わない」という選択を強いられるかもしれない、と。
「(関係性は)全然、違いますね。今はもう責任感の方が強い。大げさかもしれませんが、彼らの将来を僕が握っているわけじゃないですか。もう生半可な気持ち、中途半端な覚悟では臨めません」
ヘッドコーチになったことで、孤独感を覚えることもある。でも、仲間たちに明確な線引きをすることで、冷静にチームを見つめることができている。
「今年はアグレッシブなアタッキングフットボールを展開しようという話を選手にはしていますし、僕は僕で思い切って勇敢にやるだけだと思っています」
世界を見渡せば、30歳前後でトップカテゴリーのクラブを率いる若手監督が現れている。コーチングのプロを目指す上で、戸田のように早くからキャリアを決断するケースは今後も増えていくだろう。21歳の若さでチームの責任を背負う経験は何にも変え難い。
だが、そんな勇ましい姿にリスペクトの思いを抱きながらも、複雑な表情を浮かべるのは“使われる側”だ。中でも、柏U-15時代から戸田と苦楽を共にしてきた同級生のMF田村蒼生の言葉には、胸を締め付けられた。
〈後編へ続く〉