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“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「ベンチでの佇まいも雰囲気があるんです」名門・筑波大サッカー部の選ばれし“推薦組”が異例の決断…わずか1年で“選手”を辞めた、なぜ?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2024/04/05 17:02
リーグ連覇を狙う筑波大学でヘッドコーチに就任した戸田伊吹(4年)。プレーヤーとして入学したが、2022年から指導者に専念している
選手を引退した戸田が指導者としての歩みを始めた2022年、このときコーチを務めていたのが元日本代表・平山相太(現・仙台大監督)だった。戸田を平山の右腕に育て上げ、いずれ平山が大学院を卒業したあとに現場の指揮を託そうというビジョンだった。
「僕が監督になってから、“ヘッドコーチが采配の全権を握る”というかつての筑波大の風習がなくなっていました。2023年はヘッドコーチとして平山に全権を渡し、その流れを1年で終わらせないよう、その間に伊吹に成長してもらおうと思いました」
2022年はセカンドチームのヘッドコーチとして指揮を取り、2023年は平山ヘッドコーチのアシスタントコーチとして1年間、トップチームの指導に携わった。かつての仲間たちとピッチ外で一緒にいることはほとんどなくなったが、逆に平山をはじめとした大学院生とサッカー談義する時間は増え、院生の控え室に入り浸るほどだった。
「選手時代とは違った新しい仲間ができたので、そこに対する寂しさは一切なかった」
小井土監督「指導者としての筋がいい」
溢れる知的好奇心と指導者としての向上心。悩みを抱えながらプレーしていた1年生の頃とは打って変わって、貪欲にサッカーに取り組めている自分がいた。近くで見守ってきた小井土監督も確かな手応えを口にする。
「いろいろなことに気を回して、先回りして動くことができるし、ベンチでの佇まいも雰囲気があるんです。指導者として筋がいいなと見ています」
指導者としての才能を発揮した戸田は、2023年に新人戦の指揮を執るとチームを全国大会出場に導いた。そして今季、チームの全権を握るヘッドコーチに就任した。