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サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「J1初昇格で首位!」FC町田ゼルビア“快進撃の秘密”を新主将・昌子源が解き明かす…黒田剛監督は「負けることへのアレルギーが強烈なものが…」
posted2024/04/02 17:03
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shigeki Yamamoto
チームの“重し”となる存在
苦しくなると、満を持して“あの男”が呼ばれた。
J1に初昇格したFC町田ゼルビアが3連勝を懸けて臨んだ3月16日、アウェイでの北海道コンサドーレ札幌戦。2点をリードしながらも後半39分に1点を返され、札幌の追い上げムードが漂っていた。
黒田剛監督から声が掛かったのは、今季鹿島アントラーズから移籍してきたロシアワールドカップ日本代表のセンターバック、昌子源だ。J開幕の2日前、練習中にチームメイトとの接触でひざを痛めて出遅れていたものの、全治の見通しを大幅に繰り上げて前節の古巣の鹿島戦に続いてベンチに入っていた。
「テーピングをひざにガチガチに巻いていましたけど、予防の意味もあるので。ベンチからは『ゲームを一度落ち着かせてくれ』と。そして『ここで引くとやられてしまうから、前から(守備を)行かせて戦う火をもう1回つけてくれ』と言われて入っていきました」
昌子の投入によって4バックから3バックにチェンジ。声を張り上げ、ラインをプッシュアップする。ゴール前に落とされたボールを何とか左足でクリアして相手のセットプレーになると、“引き締めろ”と言わんばかりに両手を叩いてチームを鼓舞していく。
「ああいった状況でチームを落ち着かせるっていうのはなかなか難しい。だからチームというより自分のプレーにフォーカスしましたね。ふんわりじゃなくてピリッとして入れば、全体もそうなりますから。声掛け一つとっても、『ラストやぞ。ここでお前の頑張り一つでチームが助かるぞ』って言ってあげればいいだけ。(プレーしたのは)短い時間やし、特に自分が何かしたわけじゃないけど、あのまま逃げきれたというのはチームとして一歩前進かな、と」
バタついていたチームを落ち着かせ、闘う気持ちを再点火させて危機を切り抜けた。札幌に勝ってJ1の首位に立ったこのゲームは、町田デビューを果たした昌子にとってJ1出場250試合目となる節目ともなった。
何よりチームの“重し”となる存在である。
抜群の経験値を誇ることは言うまでもない。鹿島ではJ1、天皇杯、YBCルヴァンカップ、ACLとすべてのタイトルを手にし、クラブワールドカップでもアジア勢初となる決勝進出を果たした。ロシアワールドカップでは吉田麻也の相棒としてレギュラーを張り、ベスト8まであと一歩だったことも周知のとおりだ。経験値の乏しい町田のなかでその実績は飛び抜けている。
決め手は「なぜ自分が必要なのか」
ワールドカップ後の昌子はフランスのトゥールーズ、ガンバ大阪、そして古巣の鹿島と渡り歩き、昨季は出場機会が限られた不完全燃焼のシーズンを送った。そんな彼に、真っ先に熱意あるオファーを届けたのがJ1昇格を決めた町田であった。