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「マジメな選手ほどケガをするんじゃないか」堀江翔太38歳が立てた仮説とは…? まだまだできるのに“サプライズ引退”をかましたワケ
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/03/29 11:08
日本代表でも長らく活躍してきた堀江翔太(38歳)。ラストゲームが迫ってきた
佐藤が立てたメニューを、堀江はリモートで実施した。この動きが正しいのか否か。発想は合っているのか。疑問があれば、すぐに佐藤と連絡を取り、理解を深めていった。すると、体の構造、動かし方の“沼”にハマっていく。
「これはあくまで僕の見方ですけど、ラグビーでは自分でステップを切ったときに、いわゆる“自爆”するケースって結構あるんです。でも、自分の動きでケガをする人って、真面目な選手が多いです。トレーニングを欠かさずやっている選手に限って、ケガをすることが多いんじゃないかと思ってて」
堀江の見立てでは、受傷したことでより鍛えなければならないと思い、さらにトレーニングに励んでしまう。しかし、ケガを誘発した原因を除去していないため、また同じケガをするケースが見られるという。
「前十字靭帯をケガするラグビー選手が後を絶たないです。たとえば、左にステップを切る時に右膝の前十字靭帯をケガしてしまう場合、一生懸命スクワットをやっている選手だと、太ももの外側に筋肉がついていて、外側に引っ張る力が働きます。つまり、踏ん張った右足の方に引っ張られる。でも、自分は左に行きたいから膝の部分がねじれてしまう。前十字靭帯はねじれに弱いですし、そこにウェイトトレーニングで鍛えた上半身の重さが加わると、前十字靭帯をケガするリスクが高まるんじゃないかと思ってるんです」
適切なトレーニングで、健康な生活を
ケガを誘発した原因を探り、トレーニングによってそれを除去していく。実はトレーナーの佐藤はビーチサッカーの元日本代表の選手で、前十字靭帯断裂を自力で治した経歴を持つ。堀江は選手たちの充実を図るために、引退後はSTAの活動に本腰を入れるつもりだ。
「治療とかはしません。佐藤さんがゴッドハンド過ぎるんで、僕には手出しできないです(笑)。でも、こういう考え方を広めていけたら、もっともっと日本のスポーツは強くなるんちゃうかと思ってて。だって、僕の場合は首の治療をしたあとの方が明らかにコンディションが良いですから。それだけじゃなく、50歳を過ぎて、肩や腰、膝が痛いと感じてる人たちって多いと思うので、それで悩んでいる人たちが適切なトレーニングをすれば、より健康的に生活できるはずなんです。このメソッドは日本ではまだ少数派ですけど、もっと広めていく活動をしていきたいなと思ってます」
しかし引退前に、リーグワンでの王座奪還という大仕事が残っている。
「いまの自分のラグビー選手としての状態ですか? とても良いと思います」
堀江のラグビー観はどこに到達したのか。次回からはその発想を探っていく。
〈つづく〉※第2回は近日公開