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高校野球の応援「なぜ“いつまでも懐メロ”なの?」ピンク・レディー、宇宙戦艦ヤマト…「いい曲だから」だけじゃない“吹奏楽部ウラ事情” 

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梅津有希子

梅津有希子Yukiko Umetsu

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photograph byYukiko Umetsu

posted2024/03/30 11:04

高校野球の応援「なぜ“いつまでも懐メロ”なの?」ピンク・レディー、宇宙戦艦ヤマト…「いい曲だから」だけじゃない“吹奏楽部ウラ事情”<Number Web> photograph by Yukiko Umetsu

学ランスタイルの高知野球部応援団。昭和な雰囲気は健在だ

 揺るぎない定番応援曲である『サウスポー』や『狙いうち』、『宇宙戦艦ヤマト』などはいわずもがな、色褪せることのない名曲ばかり。親世代や祖父母世代もみんな知っているので、球場でも大いに盛り上がる。だから、いつまでも受け継がれていく。「いい曲だから残っている」という背景はありそうだ。

お金、時間…現実的な事情もあった

 一方で、昭和レトロ曲が受け継がれている理由に、吹奏楽部の財力と時間的余裕、そして部員減という事情も絡んでいる。

  応援曲の決め方としてもっとも多いのが「吹奏楽部が持っている楽譜の中から、野球部員が好きな曲を選ぶ」というパターン。吹奏楽部の顧問や部長と、野球部の応援担当者が話し合って最終決定する。野球部の新規リクエストに応えられるような余力のある高校はそう多くはない。

 ここでいう「余力」とはずばり、財力と時間である。筆者も吹奏楽部出身なので身に染みてわかるのだが、野球応援に使われている歌謡曲やJ-POPなど流行曲の楽譜は、1曲あたり4,000~5,000円程度。応援で演奏する部分は、サビの8小節や16小節などごく短いフレーズで、前奏からエンディングまでフルで演奏することはほとんどない。それゆえ、たった数小節のために楽譜を購入するのはハードルが高い。

「本当はあいみょん、やってほしいんですけど…」

 仮にその楽譜が甲子園応援のみならず、演奏会でも使えそうな曲ならば購入を検討できそうだが、特に夏の場合、野球の地方大会とコンクールの日程が重なりやすい。7月はコンクール曲の練習が中心になるため、リクエストに応えて楽譜を用意する時間的余裕がないのだ。

 その点、100人、200人クラスの吹奏楽部なら応援専門のメンバー分けをすることも可能だが、そんな大所帯の吹奏楽部は少数派。近年、野球人口の減少がよくニュースになっているが、吹奏楽界も同じ状況だ。少子化で吹奏楽人口が減っており、小編成の学校が急増している。部員数が少なければ、活動費も少なくなる。こういった現状が、「古い楽譜をずっと使い続ける=昔の曲が多い」現状にもつながっている。

 今回、アルプススタンドで取材したある野球部員が、「本当はあいみょんの『愛の花』とかやってほしいんですけど、吹奏楽部も忙しいのでなかなか頼めないっすね……」と、こっそり本音を話してくれた。野球部も吹奏楽部も、お互いの事情の中ですり合わせながら、応援曲を決めているのだ。

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