甲子園の風BACK NUMBER
高校野球の応援「なぜ“いつまでも懐メロ”なの?」ピンク・レディー、宇宙戦艦ヤマト…「いい曲だから」だけじゃない“吹奏楽部ウラ事情”
posted2024/03/30 11:04
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph by
Yukiko Umetsu
甲子園のアルプススタンドから吹奏楽の音色が高らかに鳴り響く。聞こえてくるのは『サウスポー』『狙いうち』『宇宙戦艦ヤマト』『ポパイ・ザ・セーラーマン』……。おなじみの昭和レトロな応援曲である。
センバツ大会創設100年となる令和6年――なぜ今も変わらず、昭和の曲が応援曲に選ばれるのだろうか。
なぜ? 現地の声「古いとは思いません」
今の中高生たちが昭和の曲に触れる機会といえば、なんといってもSNSやYouTubeである。TikTokやYouTubeのショート動画で、影響力のある有名人らが振り付けつきの昭和歌謡動画をアップする。拡散されていくにつれて、中高生たちの間でも人気が高まり……というリバイバルブームが起きているようだ。
たとえば近年、野球応援で人気上昇中の昭和歌謡として、キャンディーズの『年下の男の子』がある。今回のセンバツでは使われていなかったものの、これまでに藤蔭(大分)や履正社(大阪)などが甲子園で演奏していた。両校とも「昔からの伝統」で使っているわけではない。ごく最近取り入れたきっかけはやはり、TikTok。聞けば「投稿動画を見て好きになり、応援で使うことにした」という。
ほかに、 応援席で野球部に選曲理由を取材すると、「憧れの先輩と同じ曲で打席に立ちたい」という声も聞かれる。伝説的な先輩がヒットを打った曲や、ホームランで逆転した曲などが、エピソードとともに代々受け継がれていくケースである。「この曲で点が入った」「試合の流れが変わった」など、「縁起を担ぐ」という意味合いも強いようだ。
今大会中、アルプススタンドで複数の野球部に話を聞いたところ、上記の理由のほかに、「高校野球の応援といえばこの曲だから」「子どもの頃から『サウスポー』や『宇宙戦艦ヤマト』を聴いて育ったのでなじみがある」といった声が多く聞かれた。YouTubeで昔の動画を見ている生徒も多く、ピンク・レディーのこともちゃんと知っていた(!)。さらに詳しく聞くと「最近の曲はテンポが速い曲ばかりだけど、昔の曲は落ち着いた曲調も多くて、応援に向いていると思う。全然古いとは思いません」「ヤマトは重厚で迫力があってかっこいい。打席に立つと打てる気がする」という感想も。