甲子園の風BACK NUMBER
大阪桐蔭に“憧れるのをやめましょう”「また内角に行くんか」エースは笑った…2年連続撃破・報徳学園が“横綱にビビらない”2つの要因
posted2024/03/29 18:00
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Kyodo News
根拠がある。だから自信が揺るがない。報徳学園は「大阪桐蔭」の名前に全く動じていなかった。
「監督や徳田とは試合前から内角を攻めようと」
センバツ準々決勝、報徳学園は初回にいきなりピンチを迎えていた。
先発の今朝丸裕喜投手が、今大会ナンバーワンの俊足とも評される大阪桐蔭の1番・境亮陽選手に安打を許す。2番・吉田翔輝選手に1球で送りバントを決められて1死二塁。今朝丸が大阪桐蔭の主軸と対峙する。
「監督や(捕手の)徳田とは試合前から内角を攻めようと話していました」
3番・徳丸快晴選手への初球、捕手の徳田拓朗は内角にミットを構える。今朝丸が要求に応えて見逃しでストライクを取る。2球目も内角の直球。わずかにコースが外れてボールにはなったが、徳丸の腰がわずかにのけ反る。内角のフォークでファウルをかせいで4球目。高めの直球で空振り三振に斬った。
続くラマル・ギービン・ラタナヤケ選手にも2球続けて内角の直球を投じる。2ボールで苦しいはずの今朝丸は普段のポーカーフェイスを崩し、マウンドでほほ笑んだ。3ボール1ストライクから内角を狙った直球がラマルの右手に当たり、一、二塁と走者を増やしてしまう。甲子園に大阪桐蔭の風が漂う。しかし、今朝丸は続く打者をショートゴロに打ち取り、ピンチを脱した。
その裏、思わぬチャンスが転がり込んだ。
連続四球で無死一、二塁。打席でバントの構えをした3番・西村大和選手が三塁前にゴロを転がす。三塁手の失策を誘い、満塁にチャンスを拡大する。隙を見せず、相手の隙を突く野球を特徴とする大阪桐蔭に生まれたほころび。4番・斎藤佑征選手は理解していた。
「先制すれば試合の流れを掴めると思っていました」
コンパクトにスイングし、しぶとく三遊間を抜いて狙い通り先制点をもたらした。
なおも無死満塁。続く打者の打球はセカンドへ転がる。大阪桐蔭のセカンドがグラブで弾いた球はセカンドベース上に転がり、ショートがセカンドベースを踏んでアウト。その間に三塁ランナーが生還して、2点目を奪った。2つの四球と守備の乱れ。相手のミスを逃さず、シングルヒット1本で2点を奪った。まさに大阪桐蔭が目指す形を報徳学園が見せつけた。
大阪桐蔭のネームバリューに恐れを抱いていない
大阪桐蔭と対戦する多くのチームは、その名前に怖さや圧力を感じる。