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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
北朝鮮から“取材許可”された6人…日本人記者が目撃「デジカメ没収の危機」「空港で怒られた遠藤保仁」13年前だから明かせる“ビックリ事件”
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by代表撮影/JIJI PRESS
posted2024/03/27 11:00
2011年11月14日、サッカーW杯3次予選の北朝鮮戦のため、平壌国際空港に到着した遠藤保仁ら日本代表(当時)
空港を出られず…「仕返しみたいです」
空港到着から、すでに1時間半が経った。後から到着した中国人の一団はすいすい通過していくのに、日本代表の列は遅々として進まない。ひたすら待ちぼうけの報道陣に、協会のスタッフが近づいてきて教えてくれた。
「どうやら、2カ月前に日本のホームで戦ったとき、北朝鮮代表チームの入国にかなり時間がかかったそうで。その仕返しみたいです」
なるほど。さっそくアウェーの洗礼だ。到着2時間後、ようやく報道陣の入国審査が始まった。やっぱり審査官は全然しゃべらない。10分が経過したころ、上司と思われる軍服の人がやってきて、審査官に何やら囁くと、いきなりパスポートが返された。通過オーケー。去り際、審査官がそっと僕に言った。
「アイム・ソーリー」
彼も自分の意思で時間稼ぎしているわけじゃないんでしょう。「お疲れさまです」と伝えて前に進んだ。
さて、あとは税関での荷物検査を終えれば、ようやく入国だ。と、ほっとしたのも束の間、北朝鮮の強固なディフェンスはまだまだ突破を許してくれない。税関前の床に、選手たちが座り込んでいた。再び協会スタッフからの情報によると、日本代表が持ち込もうとした食料の多くが没収されているらしい。
食料没収…急遽バナナを食べる時間に
1時間経過。暇を持て余した槙野智章、西川周作、安田はトランプを始めた。途中、何度か空港が停電した。復旧のたびに、選手たちから拍手が起こる。
2時間経過。さすがに疲れた報道陣も、床に座った。そんな僕らに、サッカー協会の小倉純二会長と大仁邦彌副会長が声をかけてくれた。両手いっぱいに、大量のバナナを抱えて。
「どうせ没収されちゃうんですから、みんなで食べちゃいましょう」
ありがたや。もぐもぐタイムで空腹をしのぎながら、さらに待つこと30分。ついに荷物を運ぶターンテーブルが動き、列が進み始めた。
選手の荷物検査が無事に終わり、ようやく僕の番も回ってきた。検査官にスーツケースを開けられ、せっかく畳んだTシャツも1枚ずつ広げられる。やましいことはしていないのに、何かドキドキする。
デジカメ没収危機…救ったラッキーストライク
と、ここで想定外の事案発生。検査官のおじさんが、僕のデジカメを「没収」と宣言した。え!? ちょっと待って。携帯電話は事前に預けると聞いていたけど、パソコンやカメラはOKのはず。帰国後は、現地の写真入りコラムを執筆する予定だったから、カメラがないのは厳しい。青ざめた僕なんか無視して、おじさんはデジカメを机の脇に置き、さらにスーツケースの中をガサゴソ探っている。