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「落ちぶれているつもりはないので!」巨人・菅野智之が初めて明かす覚悟〈不調、エースの看板、リリーフ転向論…〉完全復活への確かな手応え
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2024/03/13 11:04
新シーズンに巻き返しを期す菅野
「絶対に誰かがいかないといけないわけですから。確かに自分自身の状態も良かったけど、絶対に抑えられる保証もない。でも、僕の中では前半戦で迷惑かけたし、チャンスと思って『投げる人がいなかったら、僕がいけます』って言ったんです。僕が投げることでチームを救えるんだったら……シンプルにそう思った」
結果は7回を投げ9奪三振で6安打3失点。自身に白星はつかなかったが、チームのサヨナラ勝ちに結びつける力投を見せた。
チームの苦境を救う存在
もちろんこれだけで前半戦の“借り”をすべて返せるなどとは思っていない。それでもチームがピンチに立たされたときに、何かをしなければならないという思いが突き動かした行動でもある。それは長きに渡りエースとしてチームの勝敗を背負ってきた経験から、自然に出てきたものだったのかもしれない。
もはやバリバリのエースではないかもしれないが、それでもチームが苦境に立ったときに、そのピンチを救う。そういう投手であることが、いまの菅野の役割なのではないかと思った試合だった。
去年から度々、メディアを賑わすリリーフ転向論。昨シーズンは開幕からリリーフ陣、特にセットアッパー不在が課題となり、6月末にはクローザーの大勢投手の戦線離脱とリリーフ陣が火の車だった。そういうピンチの中でクローザーを任せられる経験と技術、メンタルを兼ね備えた投手として、筆者も菅野の名前を挙げた。
「そう言っていただけるのは光栄です。もちろん監督にやれと言われればやりますよ」
菅野が先発にこだわる理由
こう語る菅野だが、一方で自らのクローザーとしての適性に疑問を語り、やはり自分は先発向きの投手だと考えているという。
「もともとビシビシ抑えるタイプじゃないし、ホームランも多い……。ただ先発としては、去年もそんなに悪いスタッツではないはずです。確かに成績的には一番いい時より下降線かもしれないけど、先発ピッチャーとしては、まだリーグ上位の数字を残しているはずです」
昨年の成績を振り返れば投球回こそ77回3分の2と規定イニングに届かなかったが、WHIP1.09はリーグでもトップ10に匹敵する数字だ。またK/BB3.60も戸郷の3.62とほぼ同程度の数字で、被打率2割4分1厘、与四球率1.74はリーグトップクラスである。
そこが菅野が先発にこだわる一番の理由なのだ。