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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
鈴木彩艶21歳の告白「森保監督からレギュラー確約なかった」「差別的発言に触れた理由は…」“批判された守護神”が語るアジアカップの真実
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/03/06 11:05
アジアカップで日本代表の正GKを務めた鈴木彩艶。21歳の守護神が、さまざまな困難に見舞われた大会の裏側を初めて明かした
このシーンではペナルティーエリア内に日本のフィールド選手が7人いたのに対して、イラクはフセインを含めて4人。人数は十分足りていたのにクロスを簡単に上げさせ、フセインにはフリーでシュートを打たれた。
思えばここでチームとして厳しく引き締めることができていれば、2点目をあれほど簡単に奪われることもなかったのではないだろうか。日本はその後、前半アディショナルタイムに右サイドを突破され、クロスに対してまたしてもフセインが中央でヘディングシュート。この時もペナルティーエリア内のフィールド選手は日本の6人に対してイラクは3人だったが、フセインを止めることができなかった。
鈴木は「あの失点は、中に相手がいるのは分かっていたし、中の選手に対してコーチングもしていましたが、最後のところで僕も含めてみんながボールウォッチャーになってしまった」と振り返った。
大会期間中に「差別的発言」に触れた理由
一方で、イラク戦後のタイミングで鈴木にとって別の問題が起きていた。自身のSNSに差別的なコメントが投稿されたのだ。
アジアカップの日本代表は、次の試合までの間に各選手が一度ずつ取材対応をするシステムをとっていた。鈴木はイラク戦の3日後、1月22日の練習後が取材対応の日だった。
取材陣の質問は、映像確認を経た上での改善点についてから始まり、鈴木のプレーに対して批判の声が出ていることへと続いていった。
鈴木は「日本代表のゴールキーパーである以上、高いレベルを要求される。(批判も)受け入れながら、次につなげたい」と素直な口調で言いながら、「失点についてたくさんの声があるのは自分自身も分かっていますが、その中でも差別的発言については控えていただきたいと思います」と続けた。
正当な批判については真摯に受け止めていた鈴木だが、差別的な投稿を看過するわけにはいかなかった。
今回のインタビューでは、この発言に至った思いについても尋ねた。鈴木はまず、「いろんな声があるのは分かるということを伝えて、その中で差別的な発言は控えていただきたい、という流れでした」と、必ずしも“差別的発言”の部分だけを強調したわけではないことを説明した。
これは筆者が現地で直に聞いていた通りの印象だ。とはいえ、差別が世界的に大きな問題になっている以上、メディアで大きく扱われるのは必然でもある。
大会中に言及することで自身のメンタルにさらに大きな負荷がかかる可能性もある中で、自らこの問題を切り出したのはなぜか。これには明確な覚悟と意図があった。