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物議の卓球「11-0禁止」は中国発祥? 世界卓球で中国人選手が語っていたこと…筆者が「暗黙ルールは消えてしかるべき」と考える理由
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/02/25 11:03
世界卓球でプレーする平野美宇
サッカーではこれまで、怪我で起き上がることができない選手がいるとボールを外に出してゲームを止めて、それに対して怪我した選手が出た側のチームはスローインで相手にボールを返す光景が見られた。
ボクシングでは開始時にお互いにグローブを合わせる光景がある。正々堂々闘おうという意志表示あるいは挨拶だというが、明文化されているものではないから、そこでいきなり殴っても、物議を呼ぶことはあっても反則にはならない。
またMLBにも、大差をつけてリードしているチームは終盤に盗塁をしてはいけない、などといったさまざまな不文律があるのを耳にすることがある。
根強く存在するそれらには各競技それぞれの背景がある。ただ、卓球でのラブゲームを避けるという暗黙のルールはもうすでになくなっている、と言っていいだろう。そもそも国内ではそこまで浸透しているものでもなかった。
中国金メダリストは「11ー0」をどう考えている?
2019年の世界選手権決勝でのことだ。女子シングルスで優勝した中国の劉詩雯は試合の中で11-0と圧倒して獲ったゲームを披露している。中国内で、意図的に得点を与えることが果たして相手に対するマナーと言えるのか等、議論が起こったことが背景にあり、そこから流れが変わったという。
その翌年の2020年、カタール・オープン準決勝では伊藤美誠がリオデジャネイロ五輪金メダルの丁寧(中国)を4-0で破る快挙を成し遂げた。その第3ゲームでは11―0と相手に1点も渡さず圧倒している。
今回の世界選手権でも、木原や平野以外でもラブゲームは見られた。女子決勝トーナメント2回戦で中国はタイと対戦し3-0で破った。その第1試合で東京五輪金メダルの陳夢が第3ゲームを11―0で獲っている。
試合後、陳夢は中国メディアに対し、「1点であっても気を緩める勇気はありません。集中できたことに満足しています」と話している。