「広岡達朗」という仮面――1978年のスワローズBACK NUMBER
巨人・王貞治の世界記録にヤクルト戦士が「あぁ、よかった…」 広岡達朗の愛弟子・水谷新太郎はなぜ“巨人への劣等感”を抱かなかったのか
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph byJIJI PRESS
posted2024/02/21 17:03
1977年9月3日のヤクルト戦で“世界新記録”となる756本目のホームランを放った巨人の王貞治。水谷新太郎はこの試合でショートを守っていた
この年の日本シリーズでは足立が孤軍奮闘の活躍を見せた。第3戦に先発してスワローズ打線をわずか3安打に抑える完封勝利を挙げると、3勝3敗で迎えた第7戦のマウンドを託されたのも足立だった。
「この試合でも僕は、“絶対に勝てる！”という思いでした。それは第4戦、西宮球場での勝ち方があまりにも劇的だったからです……」
水谷新太郎が「日本一」を確信した瞬間
水谷が指摘した第4戦は、1点を争う緊迫した展開となった。4対5、ブレーブスのリードで迎えた9回表、一死から水谷が中前安打で出塁したものの、盗塁失敗。反撃ムードは潰えたかと思えた。しかし、二死から代打・伊勢孝夫がヒットを放ち、続くデーブ・ヒルトンの逆転ホームランで辛くも勝利を手にした一戦である。
「盗塁失敗したときには“ヤバイ”って落ち込みましたよ（苦笑）。でも、そこで伊勢さん、ヒルトンが繋いでくれた。“これで勝ったな”って思いました」
水谷が口にしたのは「この試合に勝った」という意味ではなく、「このシリーズはオレたちがもらった。オレたちが日本一になる」という揺るぎない確信だった。そして、それは現実のものとなるのである――。
＜水谷新太郎編第4回／連載第24回に続く＞
