「広岡達朗」という仮面――1978年のスワローズBACK NUMBER
広岡達朗92歳に問う「本当は巨人へのコンプレックスがあったのでは？」ついに語った“ヤクルト監督時代の本心”「あなたの言う通りかもしれない」
posted2024/10/07 11:02
ヤクルト監督時代の広岡達朗と、「V9」指揮官の川上哲治。92歳の広岡が「巨人、そして川上への本当の思い」を語った
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph by
Sankei Shimbun
広岡に「ジャイアンツコンプレックス」はあったのか？
広岡達朗がヤクルトスワローズ監督に就任した際に「ジャイアンツコンプレックスの払拭」を大命題として掲げたことは何度も述べた。その一環として、1978（昭和53）年から、広岡は腹心として森昌彦（現・祇晶）を三顧の礼をもって迎え入れた。大矢明彦へのインタビューで印象に残ったのが、こんなコメントだ。
「森さんはとにかく、“ジャイアンツはたいしたことない”とか、“ジャイアンツは強くない”とおっしゃっていましたね。でもね、これは個人的な考えですけど……」
ひと呼吸おいて、大矢は続けた。
「……こうしたことをミーティングで発言する狙いはわかります。ただ、選手からすれば“ジャイアンツではこうだった”と、他球団の話ばかりされるのは、すごく気になるんです。確かにジャイアンツは強かったし、僕らだって“勝ちたいな”とは思っていました。でも、生意気な言い方になるかもしれないですけど、僕らよりも、広岡さんや森さんの方が、ジャイアンツに対する意識は強かったような気がしますね」
大矢の肌感覚で言えば、「選手たちよりも、当の広岡自身がジャイアンツコンプレックスを抱いていたのでは？」と感じられた。92歳となった広岡に単刀直入に問いを投げかける。
――実は、選手たちよりも誰よりも、あなた自身が「ジャイアンツコンプレックス」を抱えていたのではないですか？
この問いに対して、広岡は憤然として答えた。
「コンプレックスなどあるわけがない。あるのは“川上さんを超えたい”という思いだけ。V9を達成した川上さんを超えること。それが私の心にあったこと」
