日本一の翌年に途中退任…広岡達朗はヤクルトに何を残したのか？ 井原慎一朗が語る“本当の手腕”「広岡さんは勝つための手段を教えてくれました」

日本シリーズでは4試合に登板し、日本一に貢献

　ついに、悲願のリーグ制覇を果たした。次なる目標は、この余勢を駆って日本シリーズを勝ち抜くことだった。対するは、パ・リーグの覇者・阪急ブレーブス。リーグ4連覇を実現し、3年連続日本一の黄金期にあった。下馬評では、「阪急有利」の声が圧倒的だった。しかし、この年、リリーフエースを務めた井原慎一朗はキッパリと言う。

「でも、シリーズ前に広岡さんは“7戦で勝つ”って言っていました」

広岡達朗は阪急との日本シリーズを前に「7戦で勝つ」と予言していた　©BUNGEISHUNJU

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　第7戦までもつれ込んだ末に4勝3敗でヤクルトが勝利する――。指揮官の広岡達朗は、選手たちに断言していたという。「王者阪急」に対して、自信があったのか、それとも選手を鼓舞する目的だったのか？　いずれにしても、井原はこの言葉を力強く受け止めた。

「阪急打線は強力だから、“打たれるんじゃないかな？”という思いもあったかもしれないけど、このときの僕は絶好調だったんです。結果的にこのシリーズでは、僕と松岡（弘）さんが好調で、安田（猛）さん、鈴木（康二朗）さんの調子が悪かったんですけどね」

　オールスターの頃には右肩痛に悩まされ、「もう投げたくない」と思っていた人物とは思えないほど、日本シリーズ時には心身ともに万全の状態にあった。夏場を迎え、井原に対して、「お前はもう使わん」と、広岡が非情な宣告をしたのはシーズン終盤を見越したものだったのか？

「どうでしょうね。でも、広岡さんのことだから、すべてを見越していたのかもしれない。後に聞いたところでは、阪急のスコアラーも、“井原だけはわからん”と言い、上田（利治）監督も、“井原にやられた”と言っていたそうです。とにかく、シリーズのときには絶好調でした」

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