「そりゃ騒ぐのはわかるよ。『監督を男にします』なんて大きなことをいって入団した落合を、なんとか揚げ足を取ってやろうというのだろうけど、入団発表で『やってみないとわかりません』なんて助っ人なら、不要なんだよね。それをやる前から、OBが『年だからダメ』なんていうんだからね。年でダメなのはあんたたちでしょ」（週刊ポスト1994年10月28日号）

信子夫人「悪口いうんじゃない！」

　落合がいなければ、長嶋巨人の優勝はなかった。最終戦のナゴヤ球場はそれを証明する戦いの場でもあったのだ。巨人入団以来、隙あらばしつこく批判し続けた長老OBたちに対する、信子夫人の痛快なカウンターパンチである。

「わたしは誰かが何かしたいといった時は、絶対に芽を摘まないし、足も引っ張らないよ。自分の知恵を貸すよ。バッシングよりも拍手喝采、持っている知恵を貸せ。知恵も貸さずに悪口いうんじゃないっていうの。それでこそOBじゃない。かりにも自分たちが野球に携わっている人間なら、落合頑張れ、長嶋頑張れ……と拍手してやってよ。それでダメになったら一緒にショボくれたらいいのよ」（週刊ポスト1994年10月28日号）

祝勝会。長嶋監督の横にはほっとした表情の落合がいた　©KYODO

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　優勝決定直後の記者会見で、長嶋監督は「落合によって、ウチの主戦力である投手陣が支えられた」と最後まで「落合効果」を口にした。その夜、落合は原辰徳と祝杯をあげ、顔を見合わせてこう笑いあったという。

「これで負けていたら、オフの間、おれたちは家から一歩も出られそうになかったな」

　中畑におぶわれ、篠塚と胴上げを見届け、原と乾杯した。しかし、たとえ大団円の映画のようなハッピーエンドを迎えたとしても、プロ野球はここで終わりではなく、ドラマは続いていく。

　ある意味、落合博満は10.8決戦の勝利で巨人に受け入れられた。だが、その後もオレ流は、決して巨人と同化するようなことはしなかった――。

＜続く＞