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箱根駅伝・青学大の“非常識ルール”「僕は腕時計をつけない」の不思議…原晋監督が即答した「設定タイムなんて意味ないよ」
posted2024/01/24 17:50
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
JIJI PRESS
あなたの生活は、スマートウォッチに支配されていないだろうか?
私はだいぶ支配されている。
1日に60分は活動するようにして黄色のリングを完成させ、1時間に一度、あまり必要もないのに、立ち上がって1分ほどウロウロしたりする。赤いリングを効率よく閉じるために、走ることもしばしばだ。
ジョグに関しても、スマートウォッチにだいぶ影響されている。私は1キロあたり5分から6分程度のジョグしかしないが、「今日は5キロ走ろう」「30分は走らないとな」と時計を頼りにする。もちろん、1キロごとにラップも教えてくれる親切設計である。
自分の努力を認めてくれるのは、スマートウォッチだけである。
学生ランナーと「時間」
1月は箱根駅伝について考えることが多い。陸上に打ち込む学生たちは、「時間」に人生を侵食されている印象を受ける。
朝練習のジョグでは走行時間に加え、1キロをどれくらいのスピードで走るかも問われる(青山学院の選手のなかには、朝から1キロ3分20秒で押す選手もいると聞いてたまげたことがある)。
また、週に2、3度のポイント練習では設定通りのタイムで走ることが求められる。この練習で、陸上用語でいうところの「タレる」、設定タイムから遅れることにでもなったら、それは選手選考に大きな影響を及ぼす。
そして記録会ではターゲットタイムが設けられ、選手たちは自己ベストを更新すると笑顔を見せる。
原監督が即答「設定タイムなんて意味ないよ」
一方、箱根駅伝本番で「時間」や「設定タイム」から解放される学校がある。
青山学院大学だ。
1月3日の優勝会見の席上、箱根での設定タイムについての質問が出た。