- #1
- #2
箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
箱根駅伝5区、相手選手からまさかの声かけ「一緒にシード取れないぞ!」… 大東大・菊地駿介に聞いた、法政大との“奇跡の共闘”の舞台裏
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/20 11:04
ゴール後に法政大の細迫海気と抱擁を交わしたシーンが話題となった大東大の菊地駿介。あのシーンに至るまでを聞いた
「抜かした後もなかなか離れてくれなくて、このままだと自分が苦手としている小涌園辺りで再度抜かされてしまうかなって。その時ですね、細迫くんが声をかけてくれたのは。『このままじゃ一緒にシードが取れないぞ。離れずに後ろに(つけ)』って」
菊地はその言葉に驚いたという。
「レース中で自分もキツイのに、そんなことを言ってくれる選手ってまずいないので。それですごいびっくりして、だったら頑張って後ろにつくしかないと。彼の期待に応えないといけないとはすごく思いましたね」
勝って終わっただけじゃ、恩を仇で返すことになる
小涌園前から芦之湯、元箱根と、雨中の併走は10km近く続いた。順位はほとんどタイム差なしの8位と9位。ゴールに向かって、先にスパートをかけたのは菊地の方だった。
「やっぱり勝負なので。自分としてはチームがシード権を取ることが最優先で、どれだけ前で渡せるかが大事だったんです。だからどっちが先かとかは意識していなくて、とにかく1秒でも早く襷をつなごうとだけ考えてました」
菊地が先着し、細迫は区間8位の走りで後に続いた。ゴール直後に駆け寄ったのは、感謝の思いを伝えたかったからだ。
「本当に今回、こんなタイムで走れたのは細迫くんのおかげというか。やっぱり勝って終わっただけじゃ、恩を仇で返すことになると思ったので。それでとにかく感謝の気持ちを伝えようと」
細迫から返ってきた感謝
菊地が感謝の思いを口にすると、細迫の方からも意外な言葉が返ってきた。
「細迫くんは下りが苦手だったみたいで、そこで自分が前に出てくれたのが有り難かったって。『後ろにつくことができて良かった』みたいなことを言われて、自分が気づかないところで彼を助けることができたんだなって、ちょっと嬉しくなりました」
困ったときはお互い様。2人が共に笑顔だったのは、どちらにも感謝の思いがあったからなのだろう。
大東大の真名子圭監督は、「今年もうちはしのぐ山区間になりそう」と話していたが、菊地の走りはまさに値千金。「山の大東」の異名に恥じない力走だった。
菊地が笑顔になるまでに「谷の時代」があった
菊地は昨年11月の全日本大学駅伝でもアンカーを務め、チームの18年振りとなるシード権獲得に貢献。やはり満面の笑みを浮かべてゴールしている。