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「あえて距離を置いていた」“憧れの人”和田毅にロッテ・小島和哉が再入門した理由「僕の話を聞いてくれた後に…」「こういう上司、カッコいいなあ」
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byChiba Lotte Marines
posted2024/01/22 11:04
さらなる進化を目指す小島
和田の「聞く姿勢」
小島はあえて決意。それ以降、極力、相談はしないようにした。自主トレ先の長崎にも足を運ばなかった。ただ、やはり、気がつけば最後に悩みを打ち明けた相手はいつも和田だった。負けが込んで2カ月も勝ち星がつかなかったことがあった。そんな時、思わずメールを入れた。「長文が送られてきた」と和田。電話でやりとりをして、色々と相談にのってもらった。技術的な事、メンタル的な事。様々な話をしたが、今でも小島の心に残っているのは大先輩の聞く姿勢だった。
「ボクの話をある程度、聞いてくれた後に和田さんが色々とボクに質問をしてくれたんです。『こういう時はどうしているの?』とか。その時にこの人、凄いなあと思いました。こんなに年下のボクに興味をもってくれて、色々と聞いて、あれだけ実績があるのに、まだまだ色々な事を取り入れようとしている。学ぼうとしている。凄いと思いました」
そして小島は考えを変えた。大目標に掲げているから、あえて教えを乞うことはやめて自分で答えを見つけようと距離を置いていたが「聞かないのは馬鹿だなあと。もったいないことをしているなあと。聞きたいときに聞きたいことを、どんどん聞こうと思いました」と今年1月、再び和田塾に入門したいと頭を下げた。
「本当に勉強になることばかり。気づきが多い。練習メニューをただこなすのではなく、この練習でどの筋肉を使うとか、ピッチングにおいてどう有効になるから行うとか、細かく説明してくれる。そういうのを聞きながら行うのと、ただ漠然と行うのでは大きな違いだと思いました。それに誰に対しても凄く丁寧に説明をしてくれて、違うことに関してはどうして違うのかをしっかりと教えてくれる。ボク、サラリーマンではないですけど、こういう上司、カッコいいなあと思います(笑)」
ストレートの精度向上
小島が特に興味を持ったのは和田が身体の構造について深く学んでいることだった。臓器の位置を説明した上で、そもそも臓器の位置が左右対称ではないのだから、身体の構造から考えると右投手と左投手では投げ方、メカニックが全く違う、という話をしてくれた。ハッとさせられた。ウェートなどではどうしても大きな筋肉を鍛えてしまうが、そうではなく細かい小さな筋肉が大事であるということも教えてくれた。全身運動である「走る」ことは、バランスよく身体を整える上で最適だという話も聞き、なるほどと思った。
自主トレでは体幹を中心としたトレーニングがメインとなるが、小島はテーマとしてストレートの精度向上を掲げている。シーズンオフにテレビの企画で現役選手に、どの投手のどのボールが一番打ちにくいのか、をアンケート形式で調査をしている番組があった。その中でチームメートの角中勝也外野手が「和田さんのストレート」と即答したことが強く印象に残った。
「相手打者がストレートを待っているシチュエーションでストレートを投げられるような投手になりたいと思っている。和田さんのストレートはまさに憧れ」と闘志を燃やす。
早大OBの絆と切磋琢磨
この自主トレには他にも沢山の投手が和田を慕い、集まっている。早稲田大学出身者としては小島の一つ上の先輩にあたるタイガースの大竹耕太郎投手。そして小島の二つ下の後輩にあたるイーグルスの早川隆久投手だ。いずれも同じ左投手で、プロの世界で強く意識する存在だ。