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PK2度失敗でも「浦和サポは静かだった。ブラジルなら罵声だ(笑)」ワシントンが語る“点取り屋の度胸論”「フクダ、カズは逃げなかった」
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byTomoki Momozono
posted2024/01/22 11:01
2006年、浦和レッズ時代のワシントン
「静かなもの。ブーイングなんてなかった。もしこれがブラジルだったら、嵐のような罵声を浴びていたはずだ(笑)」
――そうでしょうね。とはいえ、監督の指示に逆らったのが正しかったのかどうか……。
「もちろん、褒められたことじゃないさ。ただ、それは別として、私が言いたいのは、CFはどれだけひどい失敗をしても決して挫けることなく、90分間、がむしゃらにゴールを狙い続けなければならない、ということだ」
――CFたる者、常にゴールへのあくなき執念を持ってプレーせよ、ということですね。
「そうなんだ。CFとは、単にポジションを表わす言葉じゃない。一つの職務、一つの職業を意味する。評価は、ゴールを決めたかどうか、それだけ。内容は問われない」
ナカヤマ、フクダ、カズ、ナカタは逃げなかった
――あなたがJリーグでプレーしていた前後で、そういう気持ちを持っていると感じた日本人選手はいましたか?
「いたよ。CFならナカヤマ(中山雅史)、フクダ(福田正博)ら、アタッカーという括りならカズ(三浦知良)、ナカタ(中田英寿)らだね。彼らは、自分が背負っている責任から決して逃げようとしなかった」
――確かに、ブラジルでは「チームが苦しいときに自分が背負っている責任から逃げようとせず、頑張れる選手かどうか」を重視しますね。
「その通り。もし日本でそういうことが議論されないのだとすれば、その点を重視してこなかったからじゃないのかな。選手が大成するには、技術、フィジカル、戦術理解能力はもちろん重要だけど、メンタルの部分が非常に大きい。厳しい状況で、矢面に立ってチームのために頑張れるか、力を発揮できるかどうか……。これによって、選手の価値が全く違ってくる」
――なるほど。あなたを語る上で欠かせないのは、CFとしての功績だけではありません。18年間のキャリアを通じて多くの故障や病気、とりわけ心臓疾患という生命にかかわる重大な困難に直面しながら、それらをことごとく跳ね返し、偉大なキャリアを築きました。
「あらゆる困難に打ち勝ってきたからこそ、子供時代に夢見た以上のキャリアを積むことができた。結果だけでなく、そのような結果を導いた過程についても、私は大きな誇りを抱いている」
心臓疾患を乗り越えたからこその重み
フィジカルもメンタルも極めて逞しいこのストライカーは、2005年に29歳で日本へ渡る前、実は幾多の困難に遭遇し、苦しみ抜きながらもそれらを乗り越えてきた。