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PK2度失敗でも「浦和サポは静かだった。ブラジルなら罵声だ(笑)」ワシントンが語る“点取り屋の度胸論”「フクダ、カズは逃げなかった」
posted2024/01/22 11:01
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Tomoki Momozono
ワシントンはブラジル代表や所属各クラブ、Jリーグの舞台でセンターフォワード(CF)としての重責に応え続けた。その中にあって日本のフットボールの成長について認めつつ、“日本人ストライカーに足りないもの”について、精神面を挙げた。ではワシントン自身は、どのようなマインドセットでピッチに立っていたのだろうか。浦和時代の“ある試合のエピソード”を挙げつつ、語ってくれた。
決定機を外したら文句を言われる。日本人は優しいから…
――精神面の準備が不足している、とは?
「例えば、私は幼い頃から一貫してCFとしてプレーしてきた。決定機を外したこともたくさんある。でも、ミスをしても決して下を向かない。『何が何でも結果を出すんだ』という気持ちで、決して挫けることなくチャレンジを続けてきた」
――なぜ、そのようなことができたのでしょうか?
「少年時代からの積み重ねだろうね。ブラジルでは、U-13だろうがU-15だろうが、決定機を外したら監督、チームメイトから文句を言われる。観衆からもブーイングを浴びる。でも、それで落ち込んでいたら、CFは務まらない。
一方、日本人は優しいから、選手がミスをしても周囲から厳しく責められることは少ないよね。それが災いして、逆境を跳ね返す精神的な訓練や準備がなかなかできないんじゃないかな」
PK2本失敗、浦和サポからブーイングはなかったよ
――確かに、ブラジルでは選手が決定機を外すと敵はもちろん味方のサポーターからも痛烈なブーイングが起こります。でも、日本ではそんなことはほとんどない。
「忘れられない試合がある。浦和時代、2006年のJリーグ終盤。クラブ史上初の優勝を達成するためには非常に重要な試合だったが、前半、私はPKを外してしまった。すぐにまたPKのチャンスがあり、ギド(ブッフバルト監督)は私ではなくアレックス(三都主アレサンドロ)が蹴るように指示を出した。でも、私はその指示に従わず、自分で蹴った。そして、またしても失敗。ギドは怒り狂い、ハーフタイムでも私を詰ったから、口論になった。
それでも、私は自信と冷静さを失わなかった。後半、2ゴールを叩き込み、浦和は3-0で勝った(注:2006年11月23日に埼玉スタジアムで行なわれたJリーグ第32節のヴァンフォーレ甲府戦)」
――PKを2本失敗したときの浦和サポーターの反応は?