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〈FA取得→シーズン中に残留表明〉オリックス・若月健矢が明かした決断の舞台裏「関東のチームでプレーしたい考えも…」決め手はあの人の存在
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/01/18 11:02
捕手としてのみならず、打者としても勝負強い打撃を見せる若月
「三者会談」での率直なやりとり
「正直、なんか自然と決まっちゃったみたいな感じなんですけどね」
やや拍子抜けする答えだったが、決断の理由は一つではなかったということだ。
一番は、フロント陣と腹を割って話し合える関係性があったことが大きかった。
「FAを取るか取らないかぐらいの時期に、福良(淳一ゼネラルマネージャー)さんと、僕の担当スカウトで、今は編成部副部長の牧田(勝吾)さんと3人で話す機会を3、4回設けてもらいました。『で、どう考えてんの?』とか『どういうことを求めてる?』と聞いてくれて」
それに対し、若月も率直に希望を伝えた。
「昨年のトライさん(伏見)が、FAして、ああいう契約だったじゃないですか。『あれ(ぐらいの契約)は正直、行きたいです』という感じでは伝えました。あれを見ると、やっぱり僕も行使したら、Cランクで人的補償も必要ないですし……。
それに埼玉出身で、やっぱり地元の関東のチームでプレーしたいという気持ちもゼロではなかったので、そういう思いも伝えましたし、詳細は言えないですけど、どちらかというと金額以外の部分でいろいろな希望を伝えて、だいたい飲んでもらえたという感じでした」
森友哉と競い合う道
そうした話し合いに加え、今の刺激的な環境に魅力を感じていたことも大きい。
「やっぱり今のこの環境、森友哉がいて、中嶋(聡)監督が率いていて、水本(勝己)ヘッドもいて……すごく“濃い”キャッチャーの面々が集まってるんでね(笑)。本当に刺激的な毎日で、日々勉強になることがものすごく多いですし」
「森がいるから出ていく」ではなく、競い合う道を選んだ。
「出場機会を求めて(出ていく)、というのも考えたんですけど、結局、どこに行っても競争ですし。なんか、逃げるみたいなのも嫌じゃないですか。まあ逃げるって言い方はあれだけど、これだけ、本当に切磋琢磨できる環境ですから」
昨年は、西武からFAで加入した森が110試合に出場し、そのうち捕手として先発したのは56試合。若月は96試合に出場し先発マスクは83試合だった。守備だけでなく打撃でも、若月は森が怪我で抜けた7月に4割の打率を残すなど存在感を発揮した。
賞を分け合った森への思い
シーズン後には、山本と3年連続で最優秀バッテリー賞に輝き、初めてゴールデン・グラブ賞も受賞した。
「めっちゃ嬉しかったです。僕は守備で生きていこう、守備で生きていかなきゃいけないと思っていたので」
しかも、森がベストナインを受賞。
「史上初らしいですからね。同一チームの捕手がベストナインとゴールデン・グラブを分け合うのが。それも僕は純粋に嬉しかったんです。しかも同級生のキャッチャーですよ。高校時代から知っている選手と、そんな史上初のことができて、すごく嬉しかった」