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〈FA取得→シーズン中に残留表明〉オリックス・若月健矢が明かした決断の舞台裏「関東のチームでプレーしたい考えも…」決め手はあの人の存在
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/01/18 11:02
捕手としてのみならず、打者としても勝負強い打撃を見せる若月
森も、9月半ばに若月が体調不良で登録を抹消され、連日先発マスクを被った際、「はよ帰ってきて欲しい。自分がおらん時は1カ月ぐらいずっと出させてしまって申し訳なかったんですけど、それでもほぼ2人で、ここまで頑張ってこれたので、早く戻ってきて、キャッチャーで出て欲しい」と語っていた。2人は仲が良く、互いをリスペクトし合っている様子が伝わってくる。
若月は「やっぱり友哉が来るから、本当にガムシャラな気持ちでやっていた。この思いは忘れちゃいけない」と新シーズンにも危機感を持って臨む。
面食らった中嶋監督の言葉
成長し続けなければ出番はなくなる、刺激的で熾烈な競争の中に身を置くことをあえて選んだ。
「それに、10年もいたチームですからね。愛着もあります。あとはやっぱりGMですよね。若い頃にまず使ってもらったのが福良さんだったので、その人は裏切りにくいというか(笑)」
若月は高卒2年目の2015年に一軍デビューし、3年目は85試合に起用されて一軍に定着していくが、当時、監督を務めていたのが福良GMだった。そのGMが自分を引き止めるため、積極的に希望を聞き、動いてくれるのだから、心を動かされるのは当然だった。
一方で、「監督はドライでしたけどね」と笑う。
FA権を取得した時に監督室に呼ばれ、引き止められるのかと思いきや-−。
「どうすんだよ。まあ俺はFAした身だからな。一番高いとこ行けよ(笑)」
そう言われて面食らった。
「その時期、監督室に呼んでもらえることが多かったんですけど、引き止められるというのはなかったです」と苦笑する。
「まだまだ成長できる」
監督としてというより、FA移籍を経験した球界の先輩として見守っていたのだろうか。
「僕もそんな、(監督のことを)つかめているわけじゃないので。でもやりづらさはまったくないですし、いろいろなことを自分で考えるようになりましたね。この3連覇しているチームで、ましてや投手力があるチームで、中嶋さんはキャッチャーとしても、バッティングも、成長させてくれた。僕は40歳ぐらいまでやりたいという気持ちがあるんですけど、この環境ならまだまだ成長できるなと思います」
謎多き指揮官の意図をつかめるようになった頃、若月はさらに捕手としての深みを増していることだろう。