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〈FA取得→シーズン中に残留表明〉オリックス・若月健矢が明かした決断の舞台裏「関東のチームでプレーしたい考えも…」決め手はあの人の存在
posted2024/01/18 11:02
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
JIJI PRESS
「健矢が抜けてたら、ヤバかったですね」
昨年11月、オリックスのファンフェスタの取材に向かう途中で偶然、スカウトの岡崎大輔に会った。
山崎福也の日本ハムへのFA移籍が決まり、岡崎と同期入団だった山本由伸のメジャー移籍も濃厚だった時期。2人の話に触れたあと、岡崎が漏らしたのが冒頭の言葉だった。
岡崎は、オリックスの捕手・若月健矢と同じ花咲徳栄高の3年後輩。岡崎が2017年にオリックスに入団すると、若月はまめに面倒をみて、オフには地元で一緒に自主トレも行なった。しっかり者の岡崎が若月の面倒をみているように見えることもあったが……。そうした関係性から、岡崎は親しみを込めて「健矢」と呼ぶ。
それはさておき、「健矢が抜けてたら、ヤバかった」はその通りだろう。
前年は同僚・伏見が高評価
今年11年目の生え抜き捕手。ベテランのようなどっしり感があるがまだ28歳。もともと強肩は武器だったが、キャリアを重ねるにつれてリードや技術全般が磨かれ、宇田川優希らが荒々しく叩きつけるフォークもことごとく受け止める安心感は、ゴールデン・グラブ賞受賞も頷ける。
だがその若月も、昨年はFA権を取得し、流出する可能性があった。
その前年の2022年オフ、若月と二人三脚で日本一へとリードした捕手の伏見寅威が、FAで日本ハムに移籍した。その時報道された契約は、総額3億円の3年契約。若月の年俸(推定4800万円)とは大きな差が生まれた。ほぼ同じ割合でマスクを被っていた相棒が、FA権を行使し他球団から高評価を受けた事実に、思うところはあったはずだ。
そして若月も昨年8月22日にFA権を取得。だがそのわずか2週間後の9月5日、残留を表明した。若月の推定年俸は補償の発生しないCランクということもあり、シーズン後は争奪戦も予想されたが、権利を行使せず残留を決めた。
その理由をじっくり聞きたくて、シーズン後の昨年12月、インタビューさせてもらった。