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「山の神、ここに降臨!その名は…」“元祖・山の神”今井正人が明かした箱根駅伝“山上り”の信念「人の嫌がるところで勝負してやるんだって」
posted2024/01/13 11:00
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
JIJI PRESS
『箱根駅伝「今昔物語」100年をつなぐ言葉のたすき』(日本テレビ編/文藝春秋刊)より、感涙のエピソードを抜粋して紹介します。第1回は「山の神の信念」今井正人(順天堂大学 第80〜83回出場)です。【全3回の1回目/第2回「川内優輝」編へ】
山の神の信念
「山の神、ここに降臨! その名は今井正人」
順天堂大学の今井正人さんが第82回大会の5区で3年連続区間賞をマークした際、実況アナウンサーは、驚愕の思いを込めて彼のことを山の神と呼んだ。
そんな今井さんには、山に挑む際のこんな信念があったという。
「周りからもきついコースだというのは聞いていましたし、むしろ人の嫌がるところで勝負してやるんだっていう、そういう気持ちを強く持ってました」
足の状態を判断するバロメーターとなったのが、5区の名所「函嶺洞門」だった。落石防止のために昭和6年に開通したトンネルに似た構造物で、沿道からの歓声が一時途切れるため、ランナーたちはここで静寂を得たのだ。
「山を上るにしてもリズムが良くないといけなかったので、自分の足音っていうのを大事にしていて、洞門の中はまさにそれが聞こえますので、そういうところを意識して走ってました。函嶺洞門を過ぎて、さあここからだっていう、気持ちのスイッチと体のスイッチがうまく入るような場所でしたね」
人生が変わったターニングポイント
83年もの間、ランナーを迎え入れてきた函嶺洞門だったが、老朽化のために封鎖され、第91回大会からは迂回するバイパスを通る新たなコース設計がなされた。距離の変更により、記録もまたリセット。山の神のタイムは参考記録となる。