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父は法政大のエースでも…《箱根駅伝“花の2区”区間賞》黒田朝日はなぜ青学大に?「距離は踏まない、時計はつけない」個性派エースの育て方
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byYuki Suenaga
posted2024/01/04 17:04
9位で襷を受けた黒田(写真左)は、7人抜きの快走で駒澤大追撃への勢いをつけた。急成長の裏にはどんな指導があったのだろうか?
箱根デビュー戦となる「花の2区」を1時間6分7秒で走破した。
相澤晃(東洋大、20年)に次ぐ日本人歴代2位の好タイムである。渡辺康幸(早稲田大)や鈴木健吾(神奈川大)ら歴代の名ランナーよりも速く、その価値が浮き彫りになる。
黒田は走る前から冷静で、チーム戦略も分かっていた。
「一番は駒澤大学さんとの差をいかに埋められるかが自分の役割だと思っていました。最初は余裕を持って入って、権太坂からペースを上げていくレースプランを立てていました」
1区の荒巻朋熙から9位で襷を受け取ると、5kmで集団に追いついた。好ペースを維持し、20.5kmでは創価大のスティーブン・ムチーニ(1年)をとらえて2位に浮上。7人抜きの力走だった。35秒差で駒大を追い、22秒差まで迫った。主将でエース格の鈴木芽吹(4年)を相手に差を縮めたことが、太田の快走を生んだのである。
原監督の思惑通りだろう。「負けてたまるか!大作戦」は、レース序盤に大差をつけられた時点で看板倒れになる。だから、昨年11月の全日本大学駅伝2区を新記録で走った黒田にエース区間の2区を託し、箱根路に強い太田を3区に置いた。2人がキーマンだった。
原はレース直前の黒田に連絡した。
「普段通りの自分の走りをするように」
選手の自主性を重視する“原イズム”の一端
心が震えるエールはない。普段から、こういう接し方だという。放任。まさに放っておいて任せる。原流の一端である。
冒頭の場面に戻ろう。言葉を詰まらせた黒田は、しばし考え、こう続けた。
「監督は、かなりジョグをしっかりやらせるタイプだと思いますが、僕は逆にあまりやらないタイプなんです。『自分で考えて』というのを青学は重視しています。僕もかなり、自由にさせてもらっています」
負荷の強いスピード練習などのポイント練習をこなす一方で、それ以外のジョグの日は、走る距離も個人に委ねられることが多い。