箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
インフル蔓延、虫垂炎まで…それでも青学大が“最強・駒大”に勝てたワケ「圧倒的ピーキング力」の裏にある20年越しの“原メソッド”とは?
posted2024/01/03 06:10
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Nanae Suzuki
第100回箱根駅伝の往路。従来の記録を3分以上更新し、5時間18分13秒というとてつもない大会新記録を打ち立てて往路を制したのは青山学院大学だった。
「学生たちが120%の力を発揮してくれた。いやあ、私自身、こんなことを想定してなかった。たいしたもんですね。素晴らしいです」
指揮をとる原晋監督も驚くほどのパフォーマンスを、青学大の選手たちは発揮してみせた。駒澤大学の「一強」と言われたなか、まずは往路で駒大の独走にストップをかけた。
「負けた時の原監督はメラメラと闘志が湧いてくる」
指揮官自らこう話すように、青山学院大はこの10年で6回の総合優勝を誇るが、第91回(2015年)から第94回(18年)まで4連覇を果たした後、連敗がないのだ。しかも、敗れた翌年には、いずれも大会新記録を打ち立てて、圧倒的な勝ち方で王座奪還に成功している。今回もまた、往路を終えてそんな予感がある。
駒大は、4区の山川拓馬(2年)が本調子ではなかったとはいえ、決して大きな誤算があったわけではない。実際に2位ながらも5時間20分51秒という記録は従来の大会記録を上回っている。その駒大に勝利したのだから、この価値は大きい。
初の箱根路となる2年生が青学大の1区
青学大の1区に抜擢されたのは2年生の荒巻朋熙。全日本大学駅伝で6区3位と好走しているが、今回が初めての箱根駅伝だった。
「今回、駒澤一強といわれていて、本当にギリギリの戦いになると思っていました。1区で離れたらもう終わり。当然、駒澤さんマークで行こうと思っていました」
駿河台大のスティーブン・レマイヤン(1年)の飛び出しに、駒澤大のトリプルエースの1人、篠原倖太朗(3年)が付いていくのを見て、荒巻の中で選択肢は1つしかなかった。
「ハイペースでもきちっと対応できるし、仮に遅れても、最低限のところではタスキを繋いでくれるのが彼の特徴」
原監督は荒巻をこう評する。荒巻は、その期待に応えて見せた。
もともとハイペースになるのは覚悟していた。12月中旬に駒大の佐藤圭汰(2年)が「1区を走りたい」と発言した記事を見て、佐藤が来るならハイペースになるだろうと準備をしていたのだ。なので、当日変更で篠原と走ることになっても「焦りはしなかった」という。