スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
“最強”駒大がまさかの2分38秒差で2位「箱根駅伝だけは違う」青学大・原晋監督は1カ月前に予言していた…青学大vs駒大の「決定的な差」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/02 19:54
青学大5区の若林宏樹(3年)、2位駒大に2分38秒差をつけてゴール。青学大の往路優勝は2年ぶり
「思ったより早く追いつかれて足を使ってしまいました。4区の山川(拓馬)にトップでたすきをつなげたかったんですが、青山学院の太田さんに追いつかれてから対応できませんでした。自分は――距離に対してまだ対応できない面があったかと思います。太田さんの方が強かったです」
太田の快走で青山学院は駒澤に「背中」を見せ、動揺を誘った。
往路を終えて2分38秒差。原監督は12月6日の時点で、
「山下り専用機の育成に成功!」
と自信を持っていたが、駒澤にも昨年6区で区間賞を獲得した伊藤蒼唯がいる。駒澤としては、なんとか1分台にタイム差を縮めたいところだが、さて、どうなるだろうか。
青学大“唯一のピンチ”は…
最後に往路を振り返ると、青山学院に唯一ピンチがあったとするなら、1区だったと思う。
青学大は、駿河台大の留学生、レマイヤンに潰されかねなかったからだ。
レマイヤンは、駿河台大の徳本一善監督の宣言通りに飛び出した。これに対応したのが駒澤の篠原、青学大の荒巻朋熙(2年)、そして国学院の伊地知賢造の3人だった。レマイヤンのスピードは篠原にとっては好都合だった。スローペースに巻き込まれることなく、自分のリズムを刻むことが出来たからだ。
篠原がついていったことで、青山学院と国学院も対応せざるを得なかった。原監督が「1区で1分差をつけられたら、目も当てられないよ」というように、駒澤の独走を許しかねないからである。
そのうち荒巻と伊地知が振り落とされたが、なんだかレマイヤンは不安そうだった。途中で篠原とふたりになると、「先頭、走ってよ」と篠原に視線を送っていた。レマイヤンには20kmを押し切れるスタミナがなかったのだ。彼の終盤における後退は、プラットフォームの違いと読む解くことも可能だ。
もしも、ここでさらなるペースアップをされていたら、荒巻が踏ん張れていたかどうか――。「お騒がせレマイヤン」の存在は、レースに少なからぬ影響を与えたが、荒巻は区間9位、駒澤とは36秒差で踏ん張った。
事実、ともに振り落とされた伊地知は区間17位、駒澤に1分33秒差をつけられ、国学院は後手を踏むことになってしまった。青学大がこれだけの差をつけられていたとしたら、2区黒田、3区太田、4区佐藤の3連続区間賞が生まれたかどうか、定かではない。
記念すべき第100回大会の往路は、青山学院の「箱根仕様プラットフォーム」が、駒澤の「スピード・プラットフォーム」を圧倒した。
総合優勝争いは、この2校に絞られたと言っていいだろう。
2024年のプラットフォームの争いは、1月3日、決着を迎える。