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“最強”駒大がまさかの2分38秒差で2位「箱根駅伝だけは違う」青学大・原晋監督は1カ月前に予言していた…青学大vs駒大の「決定的な差」
posted2024/01/02 19:54
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Nanae Suzuki
「箱根駅伝は最高のゲームですよ。本当に楽しいんだから」
12月6日、青山学院大学の相模原キャンパスにある原晋研究室で行ったNumberのインタビュー。青山学院の原監督は柔らかな表情で、そう話した。
初優勝した2015年からは4連覇。だが、当時の難易度は「イージー」。ところがいまは、飛躍的に難しくなっているという。駒澤の復活によって。
「いまは、箱根駅伝というゲームに対するアプローチの戦いなんです。駒澤さんは11月下旬に佐藤圭汰君が10000mで27分28秒50を出して、鈴木(芽吹)君、篠原(倖太朗)君も27分30秒台を出した。出雲、全日本では1区間たりとも先頭を譲ってないし、そりゃ駒澤が強いとなるよね。メディアのみなさんもそう書かないとおかしい(笑)。でも、私は箱根駅伝に関してだけは『青学メソッド』が有効だと思ってるんです」
青学vs駒澤の“決定的な差”
いま、駒澤と青学の間で繰り広げられているのは、「箱根をめぐるプラットフォーム」の戦いだ。
駒澤はトラック、特に10000mを重視し、スピードを身につけてハーフマラソンに向けての余裕を作っていく。
対する青学は徹底してロード重視。5000m、10000mのタイムはある程度犠牲にして、20km以上の「箱根ディスタンス」に特化した強化を図る。
「11月下旬にトラックのピークを一度作り、それから1カ月ちょっとの箱根ディスタンスでベストのパフォーマンスを見せられるのか。駒澤さんがどんな走りをするのか、すごく興味がある。ウチの選手は11月下旬の段階で調整をかけずに28分10秒前後。私はそれで十分に戦えると思ってます」
出雲、全日本まではトラックのタイムが駅伝にも直結する。だから、駒澤のスピードが生きる。しかし、10人が20km以上を走らなければならない箱根駅伝になると、ゲームのルール、いや、それ以前にプラットフォームが変わる――原監督は、そう話を展開した。
大迫傑が「20kと10kのスターは違う」
そして第100回箱根駅伝、青山学院はプラットフォームの違いがどのようなものか見せつけた。
1区では後手を踏んだが、2区の黒田朝日(2年)が駒澤を追い上げ、3区の太田蒼生(3年)が佐藤圭汰を逆転。そして4区担当の4年生、佐藤一世が駒澤を突き放した。
2区から4区まで、3連続の区間賞。なかでも圧巻だったのは、3区の太田だった。