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「40歳を超えてからのほうが楽しい」和田毅(42歳)がソフトバンクで野球を続けるモチベーションとは?「今はボーナスステージだと思って…」
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/01/17 11:00
2005年から続ける「僕のルール~1球投げるごとに10人分のワクチンを寄付」で、HEROs AWARD 2023を受賞した和田毅
「ただお金を寄付するのはどこか無責任で違和感もあった。ピッチャーなので“投げる”ことを生かしたいと思い、この方法にたどりつきました」
いい意味で大事なモチベーション
より多くのワクチンを提供できるということは、健康な証拠でもあり、1年間結果を出し続けられている証でもある。自分の成績を客観的に振り返る目安にもなってきた。
「僕が投げ続けて結果を残さなければ(支援が)できなくなるということ。いい意味で大事なモチベーションの一つになっていますね」
少年時代から赤い羽根共同募金やベルマークなど、「これは何に使われるのかな」と社会貢献活動に興味を抱いていた。社会人になって自ら稼いだお金で募金したときにどんな感覚になるのか。大人になったら稼いだお金の一部を寄付することは当たり前、いずれ自分が稼いだお金で社会貢献をしたいという思いは自然と膨らんでいった。
プロ野球選手になり球団に相談していく中で、世界にはワクチンを接種できずに命を落とす子どもが多くいることを知った。2005年に寄付を始めてから19年。「自発的にやることに意味がある」と決して周囲に対し強制はしていないが、活動を通して状況を知ってもらうことは大切なことだと感じている。
だが、こうした活動は和田にとって「特別なこと」ではない。素振りやキャッチボールと同じように、当然の感覚で行っている。
和田の社会貢献はワクチン支援だけにとどまらない。
オフシーズンには地元、島根県・出雲市で「和田毅杯少年野球大会」を開催している。自らのポケットマネーで運営。2023年も12月3日に19回目が開催され、恒例行事となっている。
さらに和田自身が企画し、NPO法人BLF(ベースボール・レジェンド・ファウンデーション)が運営することになった『DREAM BRIDGE』に参加。小学4年生から中学3年生までのひとり親家庭や児童養護施設・里親家庭で暮らす球児を対象に野球用具を寄贈している。
「僕自身は裕福でも貧しくもない普通の家庭で育ちましたが、野球用具って本当にお金がかかる。『あのグローブが欲しいな』と思っても、やっぱり親にはなかなか言えなかった。ピッチャー専用の硬式グローブをつけたのも甲子園に行ったときが初めて。それまではオールラウンド仕様のものを使っていました」
子どもたちの熱い想いに目頭が…
世の中には家庭の事情や経済的負担など、置かれた環境を理由に「野球を続けたい」「始めたい」という思いを断念しなければならない子どもたちが少なからずいる。そうした状況の改善や解決に尽力したかった。