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井上尚弥“PFP1位”激論の真相「英国人記者の発言が…」米リング誌の日本人パネリストが明かす舞台裏と投票内容「井上は胸を張るべきだ」
posted2024/05/13 11:04
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Takuya Sugiyama
アメリカに降り立った瞬間、井上尚弥(大橋)のパウンド・フォー・パウンド(PFP)ランキング1位浮上を支持する数々のメールが目に飛び込んできた。
「井上、井上、クロフォード、井上、クロフォード、井上……」
東京ドーム興行の取材を終えて、羽田空港からニューヨークに向けて帰路に着いたのは井上対ルイス・ネリ(メキシコ)戦の翌々日にあたる5月8日のこと。チェーンメールで選定委員(パネリスト)が意見を出し合う形で行われるリングマガジンのランキング選考が本格化するのは、ちょうど筆者が機内にいるタイミングだった。
昨夏以降、テレンス・クロフォード(アメリカ)がPFP1位を守ってきたが、2位につける井上が逆転するかどうかが今回の焦点。6日、東京ドームで行われたスーパーバンタム級の4冠戦で井上は初回に痛烈なダウンを喫したものの、ネリから3度のダウンを奪い返して劇的なKO勝ちを飾っていた。世界中に散らばるパネリストたちはこの勝利をどう評価するか。2019年以降、その一員に加わった筆者はどんな結論を出すべきか。
「クロフォードが1位A、井上は1位Bだ」
話し合いはまず英国のアンソン・ウェインライト氏が全階級とPFPの叩き台を作るところからスタートする。ウェインライト記者はPFPに関してはこう記していた。
「井上は初回、(ダウンを喫して)母国の人々に恐怖を味わわせ、その後にネリを突き放した。私にとってクロフォードが1位A、井上は1位Bだ」
両者が1位に相応しい実力者だとしても、順番的にはこれまで通り、クロフォード、井上ということか。筆者は今回、井上の1位浮上をプッシュする方向に傾いていたが、機内Wi-Fiでウェインライト氏の記述を見た時点では、1、2位の順位が据え置きになると予想せざるを得なかった。ところが――。