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大谷翔平、野茂英雄、黒田博樹…ドジャースは、なぜ日本人選手をよく獲得する?「ひとりの用具係」から“絆の物語”は始まった
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byAFP/JIJI PRESS
posted2023/12/19 06:04
大谷翔平を迎え入れたドジャース。過去には石井一久、齋藤隆、前田健太、ダルビッシュ有らも在籍。日本球界と縁が深い由来とは…?
日本プロ野球の黎明期以来、太平洋戦争前にもルー・ゲーリッグらトップクラスのメジャーリーガーが来日し、日本の選抜チームと対戦するなど、日米間の交流は続いた。だが、体格、技術を含め、歴然としたレベルの違いもあり、あくまでも親善試合の領域は、長く変わらないままだった。
ドジャース傘下の日本人用具係
そんな日米の狭間で、貴重な役割を果たしたのは、早大―社会人野球でプレーしたアイク(昭宏)・生原氏だった。アマ選手として現役を退き、日本で指導者の経験を経た後、単身で米国へ渡り、ドジャース傘下のマイナーで用具係として採用された。当初は言語だけでなく、人種差別などに苦しみながらも、日本人特有の勤勉さが認められ、82年からは当時オーナーのウォルター・オマリー氏の補佐として抜擢された。その後、早大時代の先輩でもある広岡達朗氏らとの親交もあり、次第に巨人や中日との関係性を深め、フロリダ州ベロビーチでの合同春季キャンプを実現させるなど、日米間の交流のみならず、日本球界の発展に大きく貢献した。攻撃ではヒット・エンド・ランや、バント、守備ではバントシフト、ベースカバーなど、細かな戦術が記され、日本野球の教科書とも呼ばれた「ドジャースの戦法」が脚光を浴び、野球界全体に広がったのも、ちょうどこの頃だった。
山本由伸だけでなく、今永昇太も…
野茂の入団以降も、ドジャースは常に日本球界とのパイプを重要視してきた。その後、石井一久、斎藤隆、黒田博樹、前田健太らだけでなく、ダルビッシュ有をシーズン途中のトレードで補強したほか、野手もマイナー契約で中村紀洋、トレードで筒香嘉智を獲得するなど、日本人選手の動向には格別の視線を向けてきた。東海岸の盟主ヤンキースが、伊良部秀輝、松井秀喜、田中将大らを獲得し、注目度を集めたとはいえ、日本球界と長い歴史を築いてきた「老舗」はドジャース。今や世界最高のアスリートとなった大谷を逃すわけにはいかなかった。