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「区間新が直近5年で頻発している」…厚底シューズは箱根駅伝をどう変えた?「40~70秒ほど速くなった」「ナイキが“独占”した年も」
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/03 06:03
もはや恒例となった厚底カーボンシューズの存在。一体、記録上はどのような変化をもたらしているのか
男子マラソンの記録ランキングにも変化が…
男子マラソンの日本リスト 2016年→2022年
10位 2時間11分34秒→2時間07分55秒(3分39秒UP)
20位 2時間12分24秒→2時間08分29秒(3分55秒UP)
30位 2時間13分35秒→2時間08分48秒(4分47秒UP)
40位 2時間14分27秒→2時間09分18秒(5分09秒UP)
50位 2時間15分09秒→2時間09分45秒(5分24秒UP)
日本人のタイムの伸びが大きい理由
記録の差は歴然だ。これは世界も同じ。男子マラソンの世界リストは2016年の50位が2時間08分11秒、同100位が2時間09分28秒。それが2022年の世界リストでは50位が2時間06分08秒、同100位が2時間07分14秒と2分以上も短縮している。サブテン(2時間10分切り)の人数でいうと112人から297人に増えている。
計算の速い読者なら気づいたかもしれないが、日本と世界ではタイムの短縮率が異なっている。日本のトップレベルの場合、3~5分も短縮しているのだ。これには主にふたつの理由があると考えられる。
ひとつはシューズの選択だ。日本人はスポーツメーカーと強い縛りのある契約を結んでいる選手が少なく、自分にフィットするシューズを選びやすい環境にある。一方、海外の選手は実業団という受け皿がほとんど存在しないこともあり、スポーツメーカーとの契約が金銭面でのサポート上大きい(あとは大会の出場料と賞金)。そのため契約メーカー以外のシューズは基本、履くことができない。日本人選手と比べて、シューズとのマッチングが良くない可能性があるのだ。
日本人選手の方が恩恵を受けている
もうひとつは走り方にある。筑波大学体育専門学群の榎本靖士准教授(筑波大学陸上競技部監督)によると、2011年のベルリンで2時間03分38秒の男子マラソン世界記録(当時)を樹立したパトリック・マカウ(ケニア)の走りを分析した結果、「着地時の足の横ブレが非常に少なかった」という。そのため、「ケニア人選手より日本人選手の方が厚底カーボンシューズの恩恵を受けているのかなと思います」と推測している。
<続く>