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「お尻や腰、背中に貼る選手が急増している」駅伝でよく見る“チタンテープのウラ話”…担当者が明かす、テープと“厚底シューズ”の関係
posted2023/10/09 06:00
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
JMPA
駒澤大が2年ぶり8度目の総合優勝で大学3冠を成し遂げた箱根駅伝。正月の風物詩となったレースでは、いつからか選手の多くが太ももやふくらはぎ、首もとに丸いテープをペタペタ貼って箱根路を走るようになった。
これはチタンを特殊コーティングしていることからチタンテープ、またはボディケアテープと呼ばれ、業界最大手のファイテンでは生地に従来の30倍濃度のアクアチタンを採用した「パワーテープX30」(50マーク入、税込1100円)がロングセラーとなっている。
駒澤大など10校以上をサポートする同社の澤野宏大さんによると、パワーテープの歴史は古く、いまから約30年前、注目選手がこれをつけて箱根を走ったときには問い合わせの電話が殺到したという。
澤野さんの仕事は、パワーテープなど同社のボディケア商品で選手たちを支えること。
「一日でも長く、いい選手生活を過ごしてほしいという思いでお手伝いをしています。例えば合宿があると酸素カプセルを載せた車で現地に赴き、疲労回復のサポートをします。数日間、選手と衣食住をともにする中で、パワーテープの貼り方などを説明することもあります。疲労が原因で可動域が狭まった箇所などを中心に貼ってボディケアすると、ビフォーアフターの感覚の違いに驚く選手がかなり多く、口コミで広がってきたのです」
パワーテープと厚底シューズの関係性
パワーテープを愛用する選手は一度に50から60マーク使用するが、150マークも貼ってレースに臨んだ選手もいるという。レースや練習の前、チームメイトに手伝ってもらいながらあちこちにパワーテープを貼ることは、もはや準備の一環といっても過言ではない。澤野さんによると駒澤大は他校に比べて使用枚数が多く、ボディケアへの意識の高さがうかがわれる。
大きなレースがあるたびに、澤野さんは選手への聞き取りや映像などを通してパワーテープの使用状況をこまめにチェックしているが、近年、興味深い変化が起きているという。
「足が多かった従来とは違い、お尻や腰、背中に貼る選手が急増しているのです。これは厚底シューズの影響だと思われます。カーボンの反発によって自然と足が前に出るので、ふくらはぎへの負担が軽くなり、代わって上半身に疲労がたまるようになったのです」
わずか1秒を削り出すために――。選手たちは小さな丸いテープを貼ることにも心を砕いているのだ。