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「区間新が直近5年で頻発している」…厚底シューズは箱根駅伝をどう変えた?「40~70秒ほど速くなった」「ナイキが“独占”した年も」
posted2024/01/03 06:03
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph by
Nanae Suzuki
今年で第100回を迎える箱根駅伝。近年では当たり前となったのが、カーボンプレート搭載の「厚底シューズ」だ。高速化をもたらした文明の利器は箱根駅伝をどう変えたのか。『箱根駅伝は誰のものか』(平凡社新書)より、「厚底シューズ」の章を抜粋してお届けします。(全3回の第1回)
厚底カーボンシューズの衝撃
近年の高速化でいえば、2017年にナイキが発売したカーボンプレート搭載の厚底シューズ(以下、厚底カーボンシューズ)の存在が大きい。
男子マラソンでは2018年2月の東京(マラソン、編集部注)で設楽悠太が日本記録を16年ぶりに更新する2時間06分11秒をマークすると、同年10月のシカゴで大迫傑が2時間05分50秒までタイムを短縮。大迫は2020年3月の東京で2時間05分29秒とさらに記録を伸ばした。現在の日本記録は2021年2月のびわ湖で鈴木健吾が打ち立てた2時間04分56秒になる。これらの記録はすべてナイキの厚底カーボンシューズがもたらしたものだ。
一時はナイキが箱根を独占状態に
大迫らの活躍もあり、学生ランナーの間でもナイキ人気は高まっていく。箱根駅伝におけるナイキのシューズシェア率は、厚底カーボンシューズが発売される直前の第93回大会(17年)は17.1%だった。それが第94回大会は27.6%、第95回大会は41.3%、第96回大会は84.3%。そして第97回大会(21年)では出場210人中201人がナイキを着用して、シェア率は95.7%に到達した。
多くのランナーがナイキを選ぶ理由は明確で、とにかく「速い」のだ。個人差はあるものの、従来のシューズと比較して、履くだけで1kmあたり2~3秒も違ってくる。厚底カーボンシューズ登場直前の第93回大会(17年)までと、現在の区間記録を比べると、違いを理解できるだろう。以下が、そのタイムだ。