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「箱根ランナーの走り方が大きく変わった」厚底シューズは日本人選手の走法も変えた「日本人には…大きな負担がかかる場合も」
posted2024/01/03 06:05
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph by
Nanae Suzuki
今年、第100回を迎える箱根駅伝。近年では当たり前となったのが、カーボンプレート搭載の「厚底シューズ」だ。東京農業大学時代に箱根駅伝を出走した筆者は「厚底シューズ」によって、トップランナーの走り方が変わったと解説する。『箱根駅伝は誰のものか』(平凡社新書)より「厚底カーボンシューズ」の章を抜粋してお届けします。全3回の第3回/前回は#2へ
早稲田大学は合宿で厚底の使用を禁じた
早稲田大学は昨年の夏合宿で厚底カーボンシューズの使用を禁止。脚を鍛えることをコンセプトに強化して、学生駅伝で結果を残した。
男子マラソンの世界記録保持者でオリンピックを連覇中のエリウド・キプチョゲ(ケニア)は標高2100mのエルドレットでトレーニングを積んでおり、アスファルトの練習は月に1回程度。路面が硬いところではほとんど走らないという。もっとも走る時期でも走行距離は1週間で200~250kmだ。週に2回は室内で約2時間のワークアウトもこなす。スピード練習は厚底カーボンシューズを使用しているが、他の練習は別のモデルを3種類ほど使い分けているという。
日本人選手も“史上最強ランナー”と同じように練習では厚底カーボンシューズに頼らず、ゴールまでシューズの性能を発揮できるようなフィジカルトレーニングを取り入れるようになっている。
シューズの影響で箱根ランナーの走りは変化している
最近の選手を見て、「走り」が大きく変化していると感じている。昔は踵部分から着地する「ヒールストライク」が主流だったが、最近は足裏全体で着地する「フラット走法」や、前足部から着地する「フォアフット」で走る選手が多くなっているのだ。
日本人は骨盤が後傾している人が多く、踵から着地するヒールストライクが自然な走り方といえる。そのためアシックス、ミズノという国内スポーツメーカーは日本人にフィットするようにシューズを設計してきた部分があった。筆者が学生時代、フォアフットで走る選手は非常に少なかったと記憶している。