巨人軍と落合博満の3年間BACK NUMBER
「マスコミは色々書くけどさ…」“猛批判された”巨人・落合博満40歳、じつは“気配り”がスゴかった…5連敗のピンチを救った「落合の緊急ミーティング」
posted2023/12/10 11:02
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph by
KYODO
あれから30年。巨人にとって落合博満がいた3年間とは何だったのか? 本連載でライター中溝康隆氏が明らかにしていく。連載第9回(前編・後編)、“落合効果”で貯金20とセ・リーグを独走する巨人。しかし7月に入りまさかの5連敗、そこで落合が動いた――。【連載第9回の後編/前編へ】
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信子夫人「ご飯の後に『ラーメン』って」
春先に受けた死球や守備時の走者との交錯で満身創痍の落合だったが、フル出場を続けながら状態を上げ、6月22日の広島戦(東京ドーム)では、勝ち越し二塁打に9号2ランとまさに四番の働きでカープの三タテに貢献する。その復調ぶりに日々の食事を管理する信子夫人も太鼓判だ。
「落合は調子がいい時は、食欲が出てきて、夕飯が済んだあとに『そば作ってくれ』って、一杯でも二杯でも食べちゃうのよ。最近、ご飯の後に『ラーメン作ってくれ』って言うようになったから、だんだん体調も良くなってきてるってことね」(週刊文春1994年6月9日号)
落合のやり方を“盗んだ”クセ者
落合と松井が打線を牽引し、原も復帰した。さらにプロ4年目の元木大介が、“クセ者”として覚醒しつつあった。特に東京ドームで無類の勝負強さを誇り、6月3日の横浜戦、長嶋監督から「下位クリ(クリーンアップ)で1点取ってこい」と送り出されると、見事に今季第1号。岡崎郁、大久保博元と続く3連続ホームランの火付け役になり、6月21日の広島戦にふくらはぎ痛の川相昌弘に代わり途中出場すると、同点の9回裏にレフトフェンスを直撃するプロ初のサヨナラ打を放った。スタメン落ちも、斎藤雅樹に「お前は一番いいところで回ってくるから、大丈夫だ」と励まされ、気持ちを切らさず打席へ向かえた。23日にも川口和久から4対4の均衡を破る2号決勝アーチ。28日の阪神戦でもプロ初のサヨナラアーチを叩き込み、6月後半の7試合で四度のお立ち台に上がるラッキーボーイぶりだ。
その渦中の26日には、雑誌「メンズクラブ」が主催するイベント「メンズクラブ・コレクティブ’94」に、プロレスラーの高田延彦と2人でモデルとしてゲスト出演。当然、シーズン中にチャラチャラするなという非難の声もあったが、会場から駆けつけた横浜スタジアムでの横浜戦は、3号アーチを含む2安打3打点の活躍だ。6月の月間打率.432と、長嶋監督も「これは、やりますよ。若い選手が、レギュラーをモノにするときの勢いがあります」と元木を絶賛した。
甲子園歴代2位タイの6本塁打を放った高校野球界の元アイドルは、遊撃や二塁を守り、一番打者から代打の切り札まであらゆる役割をこなし、入団4年目で自らの生きる道を見つけつつあった。