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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「ニッポンはエキデン中心になっている」アメリカの指導者は日本の長距離界をどう見ている?「ハーフマラソン向きの大卒ランナーが多い」
posted2023/11/05 06:01
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph by
Yuki Suenaga
過去20回以上、出雲駅伝にアイビーリーグ選抜の監督として参戦し、ボストンマラソンの優勝歴もあるジャック・フルツ氏。日本の大学とも交流のあるフルツ氏は日本の長距離界、なかでも駅伝とマラソンの関係をどう見るか。(全2回の第2回/「出雲駅伝」編は#1へ)
女子ではタカハシ、ノグチが出ているが…
「日本の優秀な男子ランナーはたしかにマラソンで思いのほか苦戦しているという印象です。2000年以降の女子を見ていくと、タカハシ(高橋尚子)だったり、ノグチ(野口みずき)だったり、私でもすぐ思い浮かぶ五輪でのマラソン金メダリストが出ていますよね。ただ、男子はどうでしょう。そのあたりにエキデンへの比重の置き方とマラソンとの関係があらわれているのかもしれません」
そう指摘するのは、ジャック・フルツ氏。20年以上にわたってアメリカからアイビーリーグ選抜を率い、出雲駅伝に参戦してきた日本通の監督だ。駅伝にも造詣が深く「エキデン競走には100年以上の歴史があり、今も沿道に多くの人が駆けつける。長距離選手をここまで熱を持って応援してくれるエキデンは素晴らしい文化」と評価している。一方で競技の側面から見た駅伝とマラソンとの関係については、こう語る。
「東京オリンピック前に日本に視察に来た時に、日本の陸上関係者とこんな話になりました。日本の優秀な大学卒の男子ランナーはハーフマラソン向きになっているランナーが多いよね、と。なぜなら彼らはハコネなどのエキデンの主要区間である20km前後に注力するケースが多い。エキデン・ディスタンスとマラソンは同じ長距離でも別の練習が必要になる。卒業後にマラソンに挑戦するとなった時にそのシフトがなかなか上手くいかない可能性はあるのではないかと思っています」
大学を卒業しても駅伝重視
フルツ監督が考える構造的な理由はこうだ。