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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「タイムは最強」アメリカ名門大学チームは、なぜ駅伝で苦戦する? アイビーリーグ選抜監督に聞いた敗因「招待いただいたのに…悔しすぎる」
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph byNanae Suzuki
posted2023/11/05 06:00
これまで計23回、出雲駅伝に参戦してきたアイビーリーグ選抜。ベスト記録は日本選手を上回るが、なぜ苦戦が続くのか。監督に聞いた
選手は実質負担なしとなるように支援を受け、歓迎される立場だからこそ、その存在価値を結果で示したかったと監督は本気で悔しがっていた。
しかし、彼らが残したのは単なる「残念な結果」だったのか。レースを見ていくと印象は異なる。
王者・駒澤大学の前を走る勇敢な逃げ
1区では、ヒューゴ・ミルナー(ハーバード大)が他の選手たちを引き連れ、果敢に逃げた。最後の残り300mまで優勝候補・駒澤大の前を走り、8秒差の2位とたしかな爪痕を残した。
「ミルナーはヨーロッパのトライアスロン大会を優勝した世界を転戦しているランナーで、期待通りの走りを見せてくれました。このレースの後、10月中に韓国と日本の宮崎でトライアスロンのレースに出る予定だった。だから、彼の状態は今“シーズン中”にあったということ、そして実際、ひと目見て『彼のベストタイムは5km13分44秒46だが、それ以上に良いのではないか』と思えるくらい、状態がとても良かった。彼が最初にチームを勢いづける走りをすることはチームへの良い影響があるだけでなく、支援してくださる方にも良いメッセージになると確信を持って、1区に送り出しました。僕が前日会見で身長が高くて目立つからご注目くださいとジョークっぽく言ったけど、本当に目立つ成績を収めてくれたよね」
193cmの長身で逆風を切り裂き、あわや区間賞という走りを見せたミルナー。ちなみに韓国のレースでは52位に沈んだが、10月28日の宮崎でのレースではワールドカップ初優勝を飾り、日本との相性の良さを印象付けた。
“不自然な”襷の受け渡しのスムーズさ
2区以降、時に苦しい表情を見せながら走りきり、13位で襷をゴールへと運んだ選手たち。気になったのは襷の受け渡しだ。日本人からすると普通に思えるが、駅伝が一般的ではない日本以外の国では、この襷の受け渡しというルールが自明ではない。彼らはなぜ当たり前のようにこなせるのか。
「アメリカではエキデンはポピュラーではありません。なので、ビデオを見せて2区以降の展開を理解してもらうことに努めました。そして、それぞれの区間でゴールできないとリレーが成立しないこと、そのためまずは中継所までゴールしてほしいこと、それができればハッピーだと最低限の目標を伝えました」
フルツ監督が見た「エキデンの原風景」
レース前日、そう語っていたフルツ監督。そんな彼もまた映像を通して、駅伝を知ったランナーだった。