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慶応大OB“じつはプロ野球で苦戦している”現実…ソフトバンク3位・廣瀬隆太はジンクス覆すか? あるスカウト「東京六大学は評価“されやすい”」
text by
元永知宏Tomohiro Motonaga
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/10/29 11:00
「慶応出身の野手」として成功した元巨人の高橋由伸
大森と同じ1986年に立教大学野球部に入った筆者は、彼の打撃のすごさを目の当たりにしている。しかし、六大学でしのぎを削った石井丈裕(法政大→プリンスホテル→西武ほか)、武田一浩(明治大→日本ハムほか)、小宮山悟(早稲田大→ロッテほか)らがプロ野球でタイトルを獲得したのとは対照的に、「ドライチ」にふさわしい成績を残すことができなかった。1999年に引退するまで、プロ10年間で放ったヒットは29本、ホームランは5本。1996年の日本シリーズで放った2本塁打が彼のハイライトとなった。
スカウト転身…坂本勇人を発掘
なぜ大森はレギュラーをつかめなかったのか。
本職は一塁手ながら外野も守れる大森だったが、ポジションの重なる外国人選手を押しのけることができなかった。1993年に始まったFA(フリーエージェント)制によって、各球団の四番打者が巨人に入団するという不幸もあった。キャリア晩年は、肩の痛みにも苦しめられたという。
書籍『不惑 桑田・清原と戦った男たち』(矢崎良一著、ぴあ刊)で大森は「慶應のプライドが邪魔したのか」と問われ、「そういうのは、いっさいなかった」と答えた。
大森は引退後、スカウトに転身。高卒プロ2年目で巨人のレギュラーポジションを獲得した坂本勇人(八戸学院光星)を見出した。
「プロで活躍できなかったことも後悔していないし、それでもクサらなかったことに誇りを持っているし。だから、今ここ(巨人)にいるんだと思う。それは、自分がスカウトしてきた若い選手に伝えていきたい」とも語っている。
慶応大OBは「ハングリーさがない?」
「慶応大OBはなぜプロ野球で成功しないのか」
セ・リーグの球団のあるスカウトにこの問いを投げかけてみた。
「歴史のある東京六大学の選手が、ほかのリーグの選手よりも高めの評価をされているのは間違いない。記録を狙える選手が出てきたら、スポーツ新聞などで記事になることも多いですから」
過去、東京六大学で通算100安打以上を記録した33人の中で、プロ野球で2000本安打を記録したのは鳥谷敬(早稲田大→阪神ほか)と谷沢健一(早稲田大→中日)だけだ。