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フランスの“ヤバい夜”…「ミトマ!」敵サポーターが絶叫、記者席では怒声「××××(怒)」ラグビーW杯、現地記者を救ったひと言「サカイ!」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/10/10 17:10
筆者は10月5日のEL、マルセイユ対ブライトンを現地取材(三笘薫がフル出場)。写真は興奮して発煙筒をたくマルセイユサポーターたち
私はこう感じた。ラグビーW杯組織委員会、メディア食がない時点で、すでに負けているからな!
驚きはそれだけでは終わらなかった。エレベーターで7階に上がり、メディアセンターに入ると――そこにはワイン、ビールが用意されているではないか!
フランスメディアは、飲みながら歓談しているので、私も飲むことにする。ワインは白、赤、ロゼの3種類。ここはロゼを係の男性に頼む。「ここで飲む? それとも記者席?」と質問された。室内ならばグラス、外の記者席ならば紙コップという具合である。室内でお願いし、「氷もいれよっか?」と聞かれたので頷くと、カウンターの彼はウィンクしながら氷をひとつ入れてくれたのだった。
もうこの時点で、ラグビーワールドカップ組織委員会よ、オリンピック・マルセイユに完敗してるからな! なんなら、非常食を配ってくれるSNCFにも負けているぜ。
「サポーターが物を投げ込むので…」
飲み終えて記者席に座ると、その眺めは圧巻だった。白と青、浅葱色の旗が振られ、歌声がスタジアムに響き渡る。
瞬時にして狂熱を感じた。
ラグビーW杯の会場で起きる、ぬるいウェーブとは大違いだ。
カタールで行われたサッカーW杯での取材経験を持つMくんは、試合後にこんなことを教えてくれた。
「今日はゴール裏に柵とネットがありました。サポーターがピッチに向かって物を投げるので、その防止です。ラグビーではそんなものはないですよ。でも、正面とバックスタンドにはネットはないので、ブライトンにPKが与えられた時とか、ペットボトルを投げていたので観客席の前の方はたいへんですよ。それに客席にはスピーカーもあるし、とにかくサポーターの声と音がすごかったです。僕のアップルウォッチが、このまま10分間この音に晒されたら、一時的な難聴になりますと知らせてきたくらいでした」
記者席から見ていると、なにか舞踊の舞台を見ているようだった。チャントが響き、選手たちはボールの動きに合わせてピッチに幾何学模様を描く。これは中毒性がある――。
記者席でも怒声「××××(怒)」
試合の方は、マルセイユが前半19分、20分と立て続けにゴールを奪う。監督がジェンナーロ・ガットゥーゾに代わった効果が出たのか、守備の圧力が効果的だった。
反対にブライトンは前半、精彩を欠いた。9月27日にカップ戦でチェルシー、9月30日にプレミアリーグでアストンビラに1対6で完敗、そして今日はマルセイユ。9日間で3試合のハードスケジュールはさすがに厳しい。