スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
フランスの“ヤバい夜”…「ミトマ!」敵サポーターが絶叫、記者席では怒声「××××(怒)」ラグビーW杯、現地記者を救ったひと言「サカイ!」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/10/10 17:10
筆者は10月5日のEL、マルセイユ対ブライトンを現地取材(三笘薫がフル出場)。写真は興奮して発煙筒をたくマルセイユサポーターたち
それでも後半9分、三笘はペナルティエリア内で好アシスト。ブライトンはようやく1点を挙げた。この瞬間、私は歓声を上げそうになったが、やっとのことでこらえた。同じ列に座っていた記者連が、その瞬間に全員が全員、机を叩いたからだ。
そして後半28分に見せた強烈なシュートはキーパーに阻まれたものの、マルセイユ担当の記者たちが一斉に「ふぅ」と息を吐いた。
ここの記者席は面白かった。試合中、誰もメモを取っていない。応援しているのである。記者席付近の警備員、エスコート役の係員も完全応援モード。後半43分にはブライトンがPKを得たときには「××××(怒)」と罵声が飛び交ったほどだ。
ラグビーの記者席では感じたことがなかった熱があり、私は多幸感に包まれた。
“すごく華奢に見えた”三笘薫
試合は2対2の引き分け。
あれだけ熱狂していたサポーターはアッという間にスタンドから消えた。
試合後の取材。私がマルセイユのガットゥーゾ監督の会見に出ていると、Mくんが「三笘、来てます」と知らせに来てくれた。慌ててミックスゾーンに行くと、日本人記者4人に囲まれている三笘がいた。フーディのフードをかぶり、うつむき加減に答えている。私が輪に加わると、チラッと一瞥される。
彼の話で得心したのは、初めてのヨーロッパ・リーグでの試合、マルセイユの雰囲気がプレミアリーグとは違ったものだったということ、「ウチは人も少ないので」と、選手層が薄いことを三笘自身が認めていたことだ。
そして私が印象的だったのは、この4週間、体重100kgも珍しくないラグビー選手ばかり取材してきたので、三笘がものすごく華奢に見えたことだ。本当に小顔なのである。
これから日曜日にはリバプールと戦い、その後は代表戦で日本に帰国し、2試合(※体調不良で不参加が発表された)。また、イングランドに戻って、今度はマンチェスター・シティとの試合。
これはたいへんな仕事だ。コンディションの維持だけで精いっぱいではなかろうか。頭が下がる思いだ。
「ミトマ!」へのベストアンサー
取材が終わって22時。トゥールーズの宿を出てからちょうど12時間。危険極まりないと噂される夜のマルセイユで帰路へと着く。今宵の宿は東横イン・マルセイユである。
外に出ると、マルセイユ・サポーターが出待ちをしていた。日本人である私とMくんを認めると、「ミトマ!」と叫ぶサポーターがいた。それほどまでに、三笘はヨーロッパで存在感を発揮している。
予め、私とMくんはマルセイユ・サポーターに絡まれそうになったら、あるひと言を言おうと決めていた。