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フランスの“ヤバい夜”…「ミトマ!」敵サポーターが絶叫、記者席では怒声「××××(怒)」ラグビーW杯、現地記者を救ったひと言「サカイ!」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/10/10 17:10
筆者は10月5日のEL、マルセイユ対ブライトンを現地取材(三笘薫がフル出場)。写真は興奮して発煙筒をたくマルセイユサポーターたち
13時過ぎに全線で運転は再開されたのだが、私たちが乗った特急はまだ発車の順番にならない。1310、1320、時計の針は進んでいく。
このままだと、マルセイユでの試合に間に合わない。
18時45分キックオフ、サッカーのヨーロッパ・リーグ、マルセイユ対ブライトン。
そう、Mくんと私のふたりは三笘薫を追いかけてマルセイユに行こうとしていた。ラグビーW杯の取材がない週の前半、私とMくんはチャンピオンズリーグの中継を欠かさず見るようになっていた。中には「マルチ・チャンピオンズ」という5元中継の番組があり、これが面白い。ヨーロッパ各地で同時多発的に驚くプレーが起きているのが分かり、すっかり虜になっていた。
そして私が10月第1週の予定を調べると――ヨーロッパ・リーグでブライトンがマルセイユに来ることが分かり、ふたりで取材申請をした(このとき、事情に詳しい赤木真二氏と杉山茂樹氏、川森睦朗氏にたいへんにお世話になった)。
Mくんがいう。
「13時30分までに出発しないと……ヤバいです」
列車は我々の不安を乗せたまま13時23分、実に158分遅れで、トゥールーズを出発した。
それからおよそ4時間。列車は17時27分、マルセイユ・サン・シャルル駅のホームに滑り込んだ。
ワインもビールも「ここで飲む?」
Mくんはすでにラグビーワールドカップのフランス対イタリア戦で会場となるヴェロドロームの取材経験があり、ターミナル駅からの最短距離が頭に入っていた。ちょうど18時、スタジアムに到着、なんとか「三笘」に間に合った。
そこからは驚きの連続だった。
オリンピック・マルセイユのチームカラーは青、歌舞伎好きの私からすると「浅葱色」だが、スタッフがその色のネクタイを結んで接客してくれる。うれしいことに取材するメディア各人には袋に入った「ランチ」が配給された。軽食ほどの意味だろうが、それでもサンドイッチがデカい!