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「ジェイミーに結構怒られちゃって…」リーチマイケル“まさかのレッドカード”から2カ月…サモア戦激闘で現地記者に明かした“意外な話”
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/09/29 20:17
サモア戦に28-22で勝利した後、ファンに挨拶するリーチマイケル
前半挙げた2つのトライは、いずれもスクラムを起点としたものだった。
ふたつのトライとも、FBのレメキが個人技で突進し、最後はフランカーがフィニッシュするという理想の形である。
日本が勝つ時の“絶対条件”
中でも2つ目のトライはクオリティが高い。スクラムからSH齋藤直人が右サイドにボールを持ち出して相手防御を引きつけ(CTB中村亮土とWTBナイカブラが内側で囮)、外に移動したSO松田力也にパスすると、この時点で外には数的優位とスペースが生まれていた。内側での齋藤、中村、ナイカブラのアクションが効いたのである。
そしてレメキが力強いランを見せ、タックルされるとその場に齋藤がいた。あまりに速いので、レフェリーのヤコ・パイパー氏とぶつかりそうになったほど――いや、パイパー氏が邪魔になるくらい、齋藤の「駆けつけ」は速く、球さばきは見事だった。
タックルされたその場にスクラムハーフがいることは、日本が勝つ時の絶対条件だ。ラックスピードが上がり、相手のオフサイドを誘発することもできる。なにより、見ていて爽快であり、痛快だ。
アルゼンチン戦に向けて、齋藤はキーマンとなるだろう。ゲームコントロールとリーダーシップは流大の持ち味だが、齋藤は効果的なアタックを演出できるからだ。
「本当に14人なのか?」
前半は日本の学習能力が際立ち、17対8とリードして折り返し。さらに後半に入ってモールで主将の姫野和樹がトライ、後半16分に25対8とリードした時には、チリ戦と同様、涼しい顔をしてビジネスライクに勝ってしまうと思ったほどだった。しかも相手WTBベン・ラムがレッドカードで退場、ひとり多い状態で日本は戦えていたのだから。
しかし、サモアはチリと違った。そこからは怒涛の攻めを見せ、本当に14人なのか? と思ってしまうほどだった。
ピッチを広く使えば、人数は意味を持つ。しかし、近場、近場にクラッシュすれば、局地戦となり、人数のハンディキャップを消すことができる(肉体的には消耗するにせよ)。
そして後半39分、6点差に追い上げられた時は、生きた心地がしなかった。